「それ以外の者はどうした、まさかこの人数ではないんだろう?」 カイザー国王はキャプテン一行の顔を見回した。 「いいえ、これだけです。陛下、どのような穿鑿も受ける覚悟は出来ています」 「そうか、宇宙船も見ていいのか?」 「はい、隠し事はありません。お調べください」 「よし、おーい、来てくれ」
カイザー国王は手を挙げ、隅で撮影していた報道スタッフを呼びつけた。そして、小 声で話をする。すると直ぐに報道スタッフが電話をかけた。その結果を国王に報告する と、国王は満足したように小さく頷いた。
「キャプテン、別の報道スタッフがキャプテンの宇宙船に向かった。宇宙船の中を撮影 する。わが国には最新型大型戦闘艇がないもので、前から見たいと思っていた。悪いが 隅から隅まで見せてもらうぞ」 カイザー国王の目がニヤリと笑った。 「陛下、お好きな時に最新型大型戦闘艇にお乗りください。われわれは大歓迎です」 「うん、よく言った、キャプテン。サザンクロス星の警護を頼む」 カイザー国王は微笑んだ。 「ところで、昨日、デスラカン帝国が襲われたと宇宙ニュースで流れていたが?」 興味深そうにカイザー国王が言う。 「はい、間違いなくわれわれです」 「そうか、その話を詳しく話してもらえないか」
「はい、昨日、このサザンクロス星にワープしたら、上空にデスラカン帝国軍の宇宙船 が飛んでいました」 キャプテンは国王の目を見て言う。 「うーん、あの時は、デスラカン帝国から植民地になれと強要されていた。言うことを 効かないとサザンクロス星を敵国とみなし、攻撃すると脅されていたところだった。な にしろわがサザンクロスは800万人の民。それに引き換えデスラカン帝国は5000 万人の民。国力も武力も違いすぎる」 カイザー国王が言う 「はい、われわれもデスラカン帝国軍が無理やり攻め込んでいるように見えたので、デ スカラン帝国の宇宙船に撤退するよう勧告しました。 しかし、受け入れてもらえず、逆に脅されました。戦力的に多勢に無勢、勝ち目があ りません」 と、キャプテンが思い出しながら話す。 「うん、それで」 「撤退しないと、デスラカン星に最終兵器をぶち込むぞと、恫喝しました。それも聞き 入れてもらえず、デスカラン帝国にワープしました。直ぐに最終兵器を撃ち込もうとし ましたが、同時にデスカラン帝国がバリアーを張ろうとしたので、ワンチャンスで宮殿 にレーザーを撃ち込みました」 「そうだったのか、よく無事に帰れたな?」 「ええ、デスラカン帝国の迎撃態勢が、整う前にサザンクロス星に帰って来ました」 「そうか、こんな幼子がいるのに....」 と、言って国王は子どものアスカを見る。 「えッ、なに、わたし。わたしと、ナオは寝てたから覚えてないの」 子どものアスカが慌てて言う。
「そうか、宇宙平和維持軍と名乗ったらしいが、本部はどこにあるんだ?」 「いや、相手から何者だと聞かれた場合、何と応えればいいのか分からず、勝手に名乗 っています。ただ、戦いで相手を殺す以上、それなりの大義名分が必要かと思い、宇宙 平和維持軍を名乗りました」 キャプテンは国王を見詰て言う。 「なるほど、もしサザンクロス星が宇宙の秩序を乱したら、どうする?」 「はい、躊躇なく最終兵器を撃ち込みます」 部屋の中央にいた、12、3人の男たちが凍りついた。 「うん、正論だ。さもなければ宇宙平和維持軍を名乗るのはおこがましい」 カイザー国王は満足そうに微笑んだ。 それから国王の質問が延々と続いた。最新型大型戦闘艇をどうやって手に入れたの か、三人の関係、アスカの生い立ち、キャプテンの経歴、ナオの生きがい。そして、ド クターロボ・マザーの製造者とその目的を丹念に追求された。
夜になり、その日の質問が終わり宇宙船に帰って来た。 「カイザー国王の質問好きには参るな、くたくただ。食事も出さないで夕食はどうす る、宇宙食のビスケットにするか?」 と、言ってキャプテンはナオの顔を見た。 「駄目よ、こういう時こそしっかりした物を食べないと、さあー、皆で作りましょう」 ナオは落ち込んでいる二人を元気付けようと、豪華な肉料理を振舞った。 「あ、おいしいよ」 口いっぱいに鶏肉をほうばり、嬉しそうにアスカが言う。 「また明日も、陛下に質問されるから頑張るのよ。アスカ」 ナオが励ますように言う。 「うん、今夜はマザーのホットドリンクを飲んで早めに寝よう」 疲れたようにキャプテンが言う。
翌日もカイザー国王の質問攻めに会う。そのため三人には隠し事がなくなった。そし て、夜になった。 「うーん、大体分かった。今日はこれで質問を終了する。それと今夜は歓迎の晩餐会を 催す。参加してくれ」 「陛下、それはありがたい。喜んで参加させて頂きます」 見せ掛けの微笑でキャプテンは頷いた。明日も質問されると思っただけで気が重くな る。これ以上何を質問するのだと訝った。 それから暫くして、オスカーが顔を見せ、三人とドクターロボのマザーは別室に通さ れた。 「あッ、きれい、すごい」 子どものアスカは天井に輝く豪華なシャンデリアを見詰た。 「ほんとうに綺麗だわ、これが宮廷の晩餐会なのね」 ナオも感心したように部屋の中を見回した。 「晩餐会を催すのは3年ぶりです。陛下の機嫌がよほどいいのでしょう」 オスカーが控え目に言う。 「うん、何かいいことがあったんですか?」 キャプテンがオスカーを見詰て言う。
「はい、陛下の質問に対して予想外の答えが返り、話が次から次へと展開するので陛下 も興味をお持ちになっておられます」 「そんなものですか」 「はい、ほとんどの人は陛下の質問に対し、”陛下その通りです”、”陛下分かりまし た”、しか言いません。そのためあなた方のざっくばらんな応答が気に入られたんでし ょう。それと他の星のことも聞きたいと思います」 「明日の質問も一日がかりですか?」 「はい、明日はあなた方の星の生い立ち、経済、政治、国民、文化、人口問題、環境問 題、そして衰退に至るまで、質問は及ぶでしょう」 囁くようにオスカーが言う。 「そうか、それを反面教師として戒めるわけか」 オスカーは微笑んで小さく頷いた。 「でも、矛盾した答え非常識な答えなら、質問はその場で終了して退席させられます」 と、キャプテンの耳もとにオスカーは顔を近づけ小悪魔的に囁く。 その時、オスカーの馥郁たる香りでキャプテンは軽い目眩を起こしそうになる。
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