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作品名:銀河を渡る船 第三部・憧れの新天地 作者:佐藤 神

第3回   3

「うん、ところでベン。サザンクロス星は、われわれと誰かを勘案している可能性があ
る。そうなると目処が立たない、その時はサザンクロスに代わる星はあるのか?」
<<キャプテン、移住先はサザンクロス星以外もありますが、地球人と外見が少し異な
りますけど、かまいませんか?>>
「どの程度異なるのだ、いや大同小異、顔さえ似ていればいい」
<<以前、ルグール星から来たメディアの取材スタッフを覚えていますか?>>
「いや、私は会ってないので分からないが?」
<<あッ、そうでしたね。実はルグール星の成人男性の身長は146センチ、女性は1
36センチなんですよ。こびととは言えませんが、小柄な人種です>>
「そうか、その星の重力は地球より重いのかな、そのため身長が伸びないのか?」

<<そうです。でも、ルグール星は生き延びるためある組織に属しています。そのため
移住先としては相応しくありません。そのルグール星に似ている星で、独立した星があ
ります>>
「うーん、よく分からないが、サザンクロス星が無理ならその星にするか?」

<<キャプテン、もう一つ条件に近い星が在りますが?>>
「そうか、その星は何か欠点があるのか?」
<<キャプテン、その星の9割が女性で、成人身長が160センチで綺麗な顔をしてい
ます>>
「ほー、いいじゃないか」
<<男が少なく一夫多妻です、そこが地球と違いますが、それはまずいでしょう?>>
「いや、地球にも一夫多妻は存在している。しょうがないんじゃないかな」
 その時、激しい声が轟く。
「駄目よ、そんな星許さないわ。冗談じゃないわよ」
 寝起きのナオは、髪を逆立てキャプテンを睨みつけた。
「そうか、ナオは反対か、じゃ、あきらめるか」

 そして、気まずい雰囲気で朝食が始まる。
「もし午前中に、サザンクロス星から連絡がなかったら、残念だがサザンクロス星はあ
きらめよう。何か策謀を企てているのかもしれない。どう思うベン?」
 ビスケットをほうばりながら、キャプテンはジロッとベンを見た。
<<キャプテン、サザンクロス人は穏やかな性格で、けしてよからぬことを企むような
宇宙人ではありません>>
「そうか、返事が遅いだけなのか」
「ねえ、キャプテン。返事をするのを忘れているんじゃないの?」
 子どものアスカが言う。
「それはありえない。もう少し待とう」

 いろいろなことを考え倦む。そして落ち着かない時が過ぎた。
<<キャプテン、こちらから連絡してみましょうか?>>
 ロボットのベンも返事がこない原因が分からず、不安な顔で言った。
「そうだな、昨日のサザンクロス星の防衛大臣ガブリエルを呼び出してくれ」
 待ちきれない顔でキャプテンが言う。
<<キャプテン、了解しました>>
 暫くして。
<<防衛大臣のガブリエルだ、結論がまだでてない>>
 やつれた声のガブリエルの声が聞こえた。
「こちら宇宙平和維持軍のキャプテン、何の議論をしているんだ?」
<<サザンクロス星の将来を検討している、昨日から徹夜でやっているが終りそうもな
い>>
「こちらも昨日から待っている、午前中までに回答をくれない場合は他の星へ行く」
 キャプテンは返事が遅いので少し苛立っていた。
<<待て、国王と相談する。午前中と言うのは今日の午前中だな?>>
「そうだ、タイムリミットは今日の午前中だ」
<<うん、分かった。早まるな>>
 話が終わりキャプテンは、冗談とも思えないガブリエルに吹きだしそうになった。

「ベン、彼らは何を相談しているのだ?」
<<キャプテン、わたしにも分かりません>>
「彼らには決断力がないのか、国王はなぜ決めない、国王が決めれば済むことだ。とも
かく12時まで待つか」
 キャプテンは理解できなかった。サザンクロス星の平和に尽力を尽くすつもりで、駆
けつけてみると素直に受け入れてもらえなかった。キャプテンの思い込みだったのか。
キャプテンの目が虚ろに泳いでいる。
「キャプテン」
 子どものアスカも杞憂に終わってほしいと小さな声で言う。
「分からない。彼らは何を考えているんだ」
「そうよねえ、何で返事をしないのかしら?」
 自信安危に陥るようにナオが困ったように眉を寄せて言った。

 三人はそのまま連絡が来るのを待った。
<<キャプテン、12時を過ぎました>>
 ロボットのベンの声が重く響いた。
「ベン、離陸しろ。そしてノーマルスピードで先ほどの独立星へ目指せ」
 キャプテンの声が悔しさに震えている。
<<キャプテン、了解しました。発進準備>>
「キャプテン」
 子どものアスカは大きな目でキャプテンを見詰る。
「しょうがない、サザンクロス星はあきらめよう」
<<キャプテン、離陸します>>
 最新型の大型戦闘艇が、宇宙港の上空に垂直でふわっと浮いた。そして、少し角度を
変えながらゆっくりと加速し、真昼のサザンクロス星から暗い宇宙空域へ進む。
「残念だったわね、いい星だと思っていたのに」
 ナオの目から涙が光った。



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