「うん、ところでベン。サザンクロス星は、われわれと誰かを勘案している可能性があ る。そうなると目処が立たない、その時はサザンクロスに代わる星はあるのか?」 <<キャプテン、移住先はサザンクロス星以外もありますが、地球人と外見が少し異な りますけど、かまいませんか?>> 「どの程度異なるのだ、いや大同小異、顔さえ似ていればいい」 <<以前、ルグール星から来たメディアの取材スタッフを覚えていますか?>> 「いや、私は会ってないので分からないが?」 <<あッ、そうでしたね。実はルグール星の成人男性の身長は146センチ、女性は1 36センチなんですよ。こびととは言えませんが、小柄な人種です>> 「そうか、その星の重力は地球より重いのかな、そのため身長が伸びないのか?」
<<そうです。でも、ルグール星は生き延びるためある組織に属しています。そのため 移住先としては相応しくありません。そのルグール星に似ている星で、独立した星があ ります>> 「うーん、よく分からないが、サザンクロス星が無理ならその星にするか?」
<<キャプテン、もう一つ条件に近い星が在りますが?>> 「そうか、その星は何か欠点があるのか?」 <<キャプテン、その星の9割が女性で、成人身長が160センチで綺麗な顔をしてい ます>> 「ほー、いいじゃないか」 <<男が少なく一夫多妻です、そこが地球と違いますが、それはまずいでしょう?>> 「いや、地球にも一夫多妻は存在している。しょうがないんじゃないかな」 その時、激しい声が轟く。 「駄目よ、そんな星許さないわ。冗談じゃないわよ」 寝起きのナオは、髪を逆立てキャプテンを睨みつけた。 「そうか、ナオは反対か、じゃ、あきらめるか」
そして、気まずい雰囲気で朝食が始まる。 「もし午前中に、サザンクロス星から連絡がなかったら、残念だがサザンクロス星はあ きらめよう。何か策謀を企てているのかもしれない。どう思うベン?」 ビスケットをほうばりながら、キャプテンはジロッとベンを見た。 <<キャプテン、サザンクロス人は穏やかな性格で、けしてよからぬことを企むような 宇宙人ではありません>> 「そうか、返事が遅いだけなのか」 「ねえ、キャプテン。返事をするのを忘れているんじゃないの?」 子どものアスカが言う。 「それはありえない。もう少し待とう」
いろいろなことを考え倦む。そして落ち着かない時が過ぎた。 <<キャプテン、こちらから連絡してみましょうか?>> ロボットのベンも返事がこない原因が分からず、不安な顔で言った。 「そうだな、昨日のサザンクロス星の防衛大臣ガブリエルを呼び出してくれ」 待ちきれない顔でキャプテンが言う。 <<キャプテン、了解しました>> 暫くして。 <<防衛大臣のガブリエルだ、結論がまだでてない>> やつれた声のガブリエルの声が聞こえた。 「こちら宇宙平和維持軍のキャプテン、何の議論をしているんだ?」 <<サザンクロス星の将来を検討している、昨日から徹夜でやっているが終りそうもな い>> 「こちらも昨日から待っている、午前中までに回答をくれない場合は他の星へ行く」 キャプテンは返事が遅いので少し苛立っていた。 <<待て、国王と相談する。午前中と言うのは今日の午前中だな?>> 「そうだ、タイムリミットは今日の午前中だ」 <<うん、分かった。早まるな>> 話が終わりキャプテンは、冗談とも思えないガブリエルに吹きだしそうになった。
「ベン、彼らは何を相談しているのだ?」 <<キャプテン、わたしにも分かりません>> 「彼らには決断力がないのか、国王はなぜ決めない、国王が決めれば済むことだ。とも かく12時まで待つか」 キャプテンは理解できなかった。サザンクロス星の平和に尽力を尽くすつもりで、駆 けつけてみると素直に受け入れてもらえなかった。キャプテンの思い込みだったのか。 キャプテンの目が虚ろに泳いでいる。 「キャプテン」 子どものアスカも杞憂に終わってほしいと小さな声で言う。 「分からない。彼らは何を考えているんだ」 「そうよねえ、何で返事をしないのかしら?」 自信安危に陥るようにナオが困ったように眉を寄せて言った。
三人はそのまま連絡が来るのを待った。 <<キャプテン、12時を過ぎました>> ロボットのベンの声が重く響いた。 「ベン、離陸しろ。そしてノーマルスピードで先ほどの独立星へ目指せ」 キャプテンの声が悔しさに震えている。 <<キャプテン、了解しました。発進準備>> 「キャプテン」 子どものアスカは大きな目でキャプテンを見詰る。 「しょうがない、サザンクロス星はあきらめよう」 <<キャプテン、離陸します>> 最新型の大型戦闘艇が、宇宙港の上空に垂直でふわっと浮いた。そして、少し角度を 変えながらゆっくりと加速し、真昼のサザンクロス星から暗い宇宙空域へ進む。 「残念だったわね、いい星だと思っていたのに」 ナオの目から涙が光った。
|
|