20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:銀河を渡る船 第三部・憧れの新天地 作者:佐藤 神

第2回   2

 暫くして。
「う、うーん....」
 キャプテンは焦点が定まらない目で、目の前のマザーの掌を見詰る。
<<キャプテン、気がつきましたか?>>
「ああ、ここは?」
<<キャプテン、サザンクロス星の上空です>>
「そうか、ベン、あの大型輸送船はまだいるか?」
<<キャプテン、大型輸送船はいます。そして高速戦闘機が約100機、輸送船から飛
び出し上空で整列しています>>
「なぜ、攻撃しないんだ?」
<<キャプテン、軍隊は全機揃ったところで攻撃を仕掛けます>>
「よし、ベン。主砲のレーザー砲で大型輸送船をを射撃しろ」
 ワープ走法で疲労困憊したキャプテンは、呟くように言う。
<<キャプテン、了解しました。主砲レーザー砲、発射>>
 眩い光が伸び、大型輸送船を貫くと思った瞬間、大型輸送船のバリアーに邪魔されて
レーザーは稲光となり弾き飛ばされた。
「うん、もう一度やるか。あんなに大きいんだバリアーの燃料切れを待とう」

 その時、大型輸送船から連絡が入った。
<<待て、撃たないでくれ。われわれは撤退する>>
 その声を聞いて、疲れていたキャプテンは大きく安堵の息を吐いた。
「いいだろう、高速戦闘機を回収して帰りなさい」
 キャプテンは呟くように言う。暫くすると、高速戦闘機が次々に大型輸送船に飲み込
まれていく。最後の一機を飲み込むと大型輸送船は青空の彼方に消えた。

「あー、やっと終わったか」
 スクリーンを見ながら、キャプテンは操縦席の背にゆったりと体を預ける。
<<キャプテン、大成功です。あそこまでデスラカン帝国に直接攻撃を仕掛けた者はい
ません。それもデスラカン帝国の象徴である宮殿の破壊。今頃はその情報がインターネ
ットでこの大宇宙を駆け巡っているでしょう>>
 興奮したようにロボットのベンが言う。
「残念なのは、最終兵器を撃ち込めなかったことだ。このような好機、二度とこないだ
ろう」
 キャプテンは一度の戦いでデスカラン帝国を消滅したかった。これからはデスカラン
帝国の防御が強固になることは目に見えていた。そのためキャプテンは奇襲に失敗した
と思った。

「ベン、サザンクロス星にメッセージを送ってくれ」
 キャプテンは躊躇することなく次の行動をとった。
<<キャプテン、了解しました>>
「わたしは宇宙平和維持軍のキャプテンだ。サザンクロス星の平和と安全を無償で守り
に来た。われわれの受け入れを要請する。できれば国王と話がしたい、連絡を待つ」
 キャプテンはベンを見て、小さく頷いた。
<<キャプテン、了解しました。メッセージを送信します>>
「うん、マザー。ナオとアスカを起こしてくれ。これ以上ワープする必要はない」
 キャプテンはマザーを見て言う。
<<キャプテン、分かりました>>
 マザーはその華奢な手をナオと、アスカの上に翳す。

「あーあ、ここはどこ。何だか疲れたわ」
「ナオ、ここはサザンクロス星だ。今受け入れを要請している」
「う、ううッ、うーん。何だかだるい」
 ナオは目を開け髪の毛をゆっくりと掻き揚げた。
「ねえねえ、キャプテン。サザンクロスで暮らすの?」
 寝ぼけた顔でアスカが言う。
「うん、受け入れ要請の返事を待っている」
<<キャプテン、サザンクロス星の応答がありません。何かあったんでしょうか?>>
「待つんだ、返事がくるまで何時間でも待つんだ」
 疲れたキャプテンの顔が険しくなる。

 そして待つこと一時間、やっと応答があった。
<<こちら、サザンクロス星の防衛大臣ガブリエルだ。どうするか検討している、とり
あえず宇宙港の隅に宇宙船を停めて、検討の結果を待っていてくれ>>
 予想外の応答にキャプテンは戸惑いを隠せなかった。
「こちらキャプテン、了解した」
 キャプテンはナオの目を見て小さく首を振った。
「ねえ、ねえ、ナオ、どうなるの?」
 子どものアスカは不安そうに聞く。
「大丈夫よ、どうにかなるでしょう。それより前回のワープより疲れたわ。あーあッ」
 髪を掻き揚げ、生あくびをかみ殺しながらナオがだるそうに言った。
「うん、何だかおかしい?」
 頭を掻きながら、元気がなく子どものアスカが言う。

「そうか、心配すると思って隠していたが、ワープしてここに到着した時、デスカラン
帝国の軍隊が上空に集結していた。わたしは退却するようにデスラカン帝国に警告した
が、聞き入れてくれなかった。
 そのため仕方なく、デスラカン帝国までワープして、宮廷を攻撃して再度、サザンク
ロス星までワープして帰ってきた。だから連続で3回ワープしたことになる」
 と、言ってキャプテンは操縦室の天井を仰いだ。
「ちょっと、なにそれ。デスラカン星に行って、宮廷を攻撃した?」
 唖然とした表情で、ナオが言う。
「すごい、キャプテン。勝ったの?」
 嬉しそうに子どものアスカが聞く。
「いや、戦力が違いすぎる。今日は挨拶程度で引き上げた」
「そう」
 子どものアスカは残念そうに言った。

<<キャプテン、子どものアスカには、3回の連続ワープはきついと思います。寝かせ
た方がいいかと>>
 ドクターロボのマザーが凛とした表情で言う。
「うん、われわれもきついので寝る。ベン、応答が入ったら起こしてくれ」
<<キャプテン、了解しました。それにしても遅いですね>>
「うん、遅い、遅すぎる」
 そして、三人はふらふらしながら操縦室を出て行く。寝室で着替えて寝ようとした
時、マザーが疲労回復のホットドリンクを持ってきたので、一気に飲み干し横になる
と、三人はあっという間に深い眠りに落ちた。

 その翌朝。
 寝相の悪いアスカの足が、キャプテンの肩の上に乗り、キャプテンは目を覚ました。
「あー、よく寝た。うん、なんだアスカの足か」
 半目でキャプテンはアスカを見詰る。
「あれ、サザンクロス星の返事がまだだったな。どうなったんだ」
 呟きながらキャプテンは着替える。そしてふらふらとサロンに向かった。
「オーイ、ベン、返事は来たか?」
<<キャプテン、サザンクロスは沈黙を守ったままです>>
「うーん、何を検討しているんだ。よく分からん。あッ、マザー。昨日のホットドリン
クが効いたのか調子が戻った、ありがとう」
<<キャプテン、それは好かった。調子が悪い時はいつでも言ってください>>
 マザーは優しく微笑みながら言う。



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1965