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作品名:銀河を渡る船 第三部・憧れの新天地 作者:佐藤 神

最終回   14

「迷子?」
 言った途端、ナオの顔色が変わる。
「まずい、言語変換機がないと言葉が通じないわ。どうしましょう?」
「ナオ、テーマパークの案内所から、迷子の呼び出しをしましょうか?」
 と、言いながらオスカーは携帯電話を握った。
「待ってくれ、誘拐とか事件性は無い。賢いアスカは今の騒ぎを利用して、意図的にず
らかったんじゃないのか?」
 キャプテンは大観覧車を見ながら言う。
「意図的にずらかる。何で、何で、ずらかるの?」
 困惑した表情でナオは聞く。

「うん、子どものアスカもストレスが溜まり身の危険を忘れて、人知不明の行動をとっ
たんじゃないかな?」
 騒ぐ必要はないという表情でキャプテンが言う。
「じゃ、どうするのよ?」
「いずれ帰ってくるだろう。アスカには行くところが無い」
「でも」
 納得がいかない表情でナオが言う。
「うん、マザーはどう思う?」
 首を捻りキャプテンは、マザーの顔を見る。
<<わたしもキャプテンの考えに賛成です。アスカは飽きれば帰ってきます>>
 マザーは静かに言った。

「ふーん、アスカはどこに行ったの?」
 険しい顔でナオはキャプテンの顔を見る。
「それは限られている。電車で一緒になった女の子とつるんでいるんじゃないかな」
 テーマパークの青い空を見ながらキャプテンは言う。
「そう。じゃ、これからどうするの?」
 どうにか興奮が治まったナオが言った。
「ここはテーマパーク中央だ。ここで待っていれば帰ってくるだろう。あそこに噴水が
ある、花壇のベンチで花でも見ながら待とう」
 キャプテンはみんなの顔を見ながら言う。
「キャプテン、迷子のアナンスを流さないでいいですね?」
 確認するようにオスカーが言う。
「うん、大丈夫ですよ。アスカは大人と何ヶ月も暮らしてきた、たまには子供同士で遊
びたいんでしょう」
 歩きながらキャプテンが言った。

「ねえ、オスカー。アスカを学校に入れたいんだけど?」
 ベンチに座り花を見ながら、思い詰めた顔でナオが言う。
「えッ、アスカを。そうねえ、頭もよさそうだからサザンクロス国立子供学校に入れま
しょうか?」
 噴水にかかった虹を見ながら、オスカーが言った。
「いや、天才のアスカと言うのは、地球での話しだ。サザンクロス国立子供学校に入れ
ば落ちこぼれになる。もっと程度の低い学校は無いかな?」
「そうよねえ、アスカが落ちこぼれて不良になるのも困るし」
 ナオが心配顔で言う。

「えッ、不良。不良ってなんですか?」
 オスカーは虹から目を移し、ナオの目を見ながら不思議そうに聞いた。
「何ていうのかしら、煙草を吸ったり、ドラックを吸ったり、不純異性行為とかかな。
ねえー、キャプテン?」
 ナオはうまく説明が出来なかった。
「うん、子どもの不良か。親に反抗的な態度を取り、社会のルールに著しく違反する行
為をとることかな」
 テーマパークの青い空を見ながらキャプテンは言う。
「理解できました、この国では死語となっています。問題がある人はDNAを操作して
矯正しています」
 頷きながらオスカーが言った。

「そうですか、サザンクロスの民800万人のうち矯正した人は、何人ぐらいいるんで
すか?」
「はい、1000人足らずです。裁判長が判決で矯正を指示します」
「そうか、この国では死刑判決は無いのか?」
 キャプテンが大きな声で言った。
「でも、警察官だけは例外です。民の生活と社会の安全を守るのが警察官の役目、矯正
では許されません。それと官僚、政治家も例外です」
 と、険しい顔でオスカーは言う。
「そうですか分かりました。じゃ、アスカは能力試験を受けさせて、それから考えまし
ょう」
 穏やかにキャプテンが言った。
「ええ、そのように手配します」

「よろしくお願いします。ところでわたしたちみたいな異星人は何人ぐらいいるんです
か?」
 ナオがオスカーの顔を見て聞いた。
「そうですね、移民者が6000人、仕事関係で4000人、観光客が3万人を少し切
るぐらいね」
 微笑みながらオスカーが言う。
「オスカー、答えたくなければ答えなくてもいいが、わたしの星に昔、マタハリという
二重女スパイがいた」
 キャプテンが静に言うと、オスカーは人差し指を愛らしい唇に当てた。
「その話は陛下を交えて、陛下も興味をお持ちです」
 青い空を見詰て、オスカーが呟く。
 そして話が途切れ、それぞれの思いを秘め青い空を仰いだ。





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