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作品名:銀河を渡る船 第三部・憧れの新天地 作者:佐藤 神

第1回   1

<<宇宙恒星日誌21080727。
 銀河系太陽系第三惑星地球人の三人、ナオ、アスカ、そしてキャプテンはサザンクロ
ス星に到着する>>

「う、うーん....」
 焦点が定まらない目で、キャプテンは辺りを見回す。
<<キャプテン、気がつきましたか?>>
「ああ、ここは?」
<<キャプテン、サザンクロス星、西1000万キロに停止しています>>
「そうか、やっとサザンクロス星に来たか」
 首を少し回しながらキャプテンはニャと笑った。宇宙船がサザンクロス星に到着する
と夜明けだった。水平線が赤く輝き始めた。
<<キャプテン、報告します。サザンクロス星の上空にデスラカン帝国の軍隊が集結し
ています>>
 珍しくロボットのベンは緊張した声で言う。

「なに、軍隊、最悪だな。ベン、わたしが分かるように状況説明をしてくれ」
 軽く頭を掻きながら、キャプテンはスクリーンを見詰た。
<<キャプテン、あの後、サザンクロスの西800万キロにワープしました。
そして、超高感度レーダにわれわれの宇宙船と同タイプの最新型大型戦闘艇と、輸送用
大型宇宙船が映っていました。わたしは急いで、この宇宙船を200万キロ後退させま
した。
 現状はレーダ圏外にいますので、こちらも相手の最新型大型戦闘艇と、輸送用大型宇
宙船がレーダに確認できませんが、相手もこちらが分かりません>>
「そうか、船識別番号は?」
<<キャプテン、デスラカン帝国の最新型大型戦闘艇と、輸送用大型宇宙船でした。そ
れも最新型大型戦闘艇は1号艇でした。1号艇は、猛将と謳われたワグナーが士気を取
っています>>
「分かった。輸送用大型宇宙船の機能は?」
<<キャプテン、戦闘能力はほとんどありませんが、高速戦闘機を1000機と兵士2
000人を搭載できます>>
「そうか、それぞれの弱点は?」
<<キャプテン、最新型大型戦闘艇には弱点がありません。輸送用大型宇宙船は高速戦
闘機が飛び立つ前に攻撃すれば、破壊できます>>
「うん、高速戦闘機の出入り口は何ヵ所だ」
<<はい、東西南北に1ヵ所づつあり、合計四ヵ所です>>
「うん、サザンクロス星は火の手が上がっていないようだな?」
<<キャプテン、デスラカン帝国はサザンクロス星と交渉中のようでした>>

「よし、これからやつらの後ろに回り込む。弱点のない最新型大型戦闘艇は手を出す
な。輸送用大型宇宙船の出入り口を破壊。四ヵ所全てを破壊する必要はない。視界に入
る出入り口だけでいい。その後で、話し合いに持ち込む」
<<キャプテン、了解しました。発進します>>

 そして、デスラカン帝国軍の後ろから近づく。
「ベン、輸送用大型宇宙船の出入り口を破壊しろ」
<<キャプテン、了解しました。距離500キロ、出口、主砲発射>>
 その瞬間、スクリーンの上部から眩い光がスーッと延びて、輸送用大型宇宙船の出口
に命中する。そして、出口から黒煙が上がり、火の手が確認できた。
<<距離500キロ、もう一方の出口、主砲発射>>
 もう一方の出口からも黒煙が上がり、火の手が確認できる。

<<誰だ、デスラカン帝国に牙を向ける輩は。うーん、消えた3号艇じゃないか?>>
 猛将ワグナーの野太い声が響いた。
「そうだ。だが今は宇宙平和維持軍の所属だ。直ぐにデスラカン星に帰りなさい」
<<ふざけた事を言うな。船を返せ。おい、ベンジャミンV号、居るんだろう?>>
 ロボットのベンは、キャプテンを見た。そしてキャプテンは大きく頷く。ベンは少し
緊張していた。

<<久しぶりですな、ワグナー将軍>>
<<このバカロボット、誰と口を聞いているんだ>>
 ワグナー将軍は、大声で叱咤する。
<<昔は昔、今は今だ。ワグナー、痛い目に会わないうちにデスラカン帝国に帰れ>>
<<ふざけるな、ベンジャミン。攻撃するぞ>>
「おい、ワグナー。ベンの言うとおりだ、おとなしく帰れ」
<<ふふふッ、ベンジャミン、わたしのことを教えてやれ。鬼のワグナーのことを>>
<<フーン、ワグナー。あんたの時代は終わった。もーいいだろう>>
 ロボットのベンの声が大きくなった。

<<この無礼者、撃ち落してやる>>
「おい、ワグナー。これが最後通告だ。帰らないと攻撃するぞ」
<<同じことを何度も言わせるな、おまえたちなど敵にもならぬ>>
「ベン、デスラカン星の宮廷上空まで、ワープせよ。最終兵器をぶち込んでやる」
<<キャプテン、了解しました。ワープ30秒前>>
<<ワァンー、ワァンー、ワァンー>>
 宇宙船内にワープ走行の警告音が鳴り響く。
<<待て、待ってくれ。おれの話を聞け>>
 ワグナーの声が空しく聞こえる。
<<ワープ20秒前、キャプテン、椅子に座って手すりを掴んでいてください>>
 ロボットのベンの声が宇宙船に響く。
「ワグナー、デスラカン星で待っているぞ」
<<ワープ10秒前>>
 宇宙船が微かに震えてきた。
<<ワープ5秒前、3、2、1。ワープ開始>>
 ロボットのベンの甲高い声が宇宙船に響いた。その瞬間、キャプテンは気を失った。

 暫くして。
「う、うーん....」
 キャプテンは焦点が定まらない目で、目の前のマザーの掌を見詰る。
<<キャプテン、気がつきましたか?>>
「ああ、ここは?」
<<キャプテン、デスラカン星の宮廷の上空です>>
「そうか、ベン、最終兵器をぶち込め」
 キャプテンは中指を立て口元がニャと笑った。

<<キャプテン、了解しました。最終兵器発射、30秒前>>
<<キューン、キューン、キューン>>
 宇宙船内に最終兵器の警告音が鳴り響く。
<<キャプテン、最終兵器発射10秒をきると、解除不能になります>>
 ベンの声が強張っている。
<<最終兵器発射、20秒前>>
「しまった。デスカラン帝国のやつら、バリアーを張ろうとしている」
 宮廷の両脇の山から、薄い黄色い膜が中心に向かい徐々に張られてきた。
「最終兵器発射中止。主砲のレーザー砲で宮殿の塔を破壊」
 キャプテンが言うのと同時に、眩い光が薄い黄色いバリアーを突き抜け、高さ300
メートルの塔を照らした。その瞬間、ズズーンと塔が崩壊し、宮廷も半壊した。その
時、オレンジ色のバリアーが完全に張られ高速戦闘機が向かって来た。
「ベン、サザンクロス星上空まで、ワープせよ」
<<キャプテン、了解しました。ワープ30秒前>>
<<ワァンー、ワァンー、ワァンー>>
 宇宙船内にワープ走行の警告音が鳴り響く。
<<ワープ20秒前、キャプテン、椅子に座って手すりを掴んでいてください>>
 ロボットのベンの声が宇宙船に響く。
「やっと、ワグナーが現れたか」
<<ワープ10秒前>>
 宇宙船が微かに震えてきた。
<<ワープ5秒前、3、2、1。ワープ開始>>
 ロボットのベンの甲高い声が宇宙船に響いた。その瞬間、キャプテンは気を失った。



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