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作品名:銀河を渡る船 第二部・道草 作者:佐藤 神

第9回   9
「そうですね、クスリは必要以上に飲まないほうがいい。それじゃ、エトランゼ室へ」
 そして、一向はキャプテンを先頭にエトランゼ室に向かった。
「ベン、このろ過装置ユニットと、宇宙食をいれる入れ物はあるのか?」
「キャプテン、あの抗菌トランスバックに詰めてください。ふたつ必要ですね。そのト
ランスバックをロープの先に結びます」
「うん、宇宙食はわたしが、ベンはろ過装置ユニットをたのむ」
 そして、手際よく梱包してスクーターに繋がっているロープに結んだ。
「キャプテン、ありがとう。これで無事に着ける」
 カカリー国王は、宇宙服を身につけてキャプテンを見て言う。
「ありがとうございました。皆様のお蔭でルグール星へ行けます」
 リリアシア王妃が笑顔で言った。
 王妃と姫は宇宙服の連結紐をロープに絡ませ、宇宙服のヘルメットを被り空気圧の調
整をした。カカリー国王は、王妃と姫の安全を確認をして、宇宙スクーターに跨り別れ
の手を振った。
「気をつけて、われわれは国王の宇宙船の後ろから付いて行きます」
 大きな声でキャプテンが怒鳴った。
 そして、キャプテン、ナオ、アスカの3人は手を振り、エトランゼ室を出る。部屋に
はスクーターに跨ったカカリー国王と、そのスクーターから垂れ下がったロープに王妃
と姫が繋がり、突っ立ていた。

「ベン、国王が帰る」
<<キャプテン、了解しました。エトランゼ室、密封開始>>
 そして、10秒ぐらいして。
<<エトランゼ室、外扉、開放>>
「これでもう合えないのね」
 暫くして、ナオが淋しそうに呟いた。
「でもキャプテン、安全宇宙空域までは付いて行くんでしょう?」
 子どものアスカが言う。
「そうだ、海賊から守るためにな」
 言いながらキャプテンはロボットのベンを見詰た。
<<キャプテン、ただ今3人はエトランゼ室から出て行きました。外扉、閉鎖開始>>
「うーん、終わったか。後は操縦室で見守ろう」
「そうね、まだ、何が起こるか分からないわ」
 心配そうにナオが言って、先頭を切って歩きだした。

「ベン、スクリーンの標準を合わせてくれ」
<<キャプテン、了解しました>>
 そして、スクリーンにカカリー国王、王妃、姫の3人が映った。
「うん、今のとこ無事だな。事故も起こりそうもないし」
 キャプテンは操縦席の椅子に背を寄りかけた。
「ええ、よかった。早くアトラス宇宙船に乗ってもらいたいわ」
 スクリーンの中の3人はゆっくりとゆっくりと進む。
 そして、飽きることなく3人はスクリーンを見詰た。

「おッ、やっと3人が宇宙船に乗ったな。もう大丈夫だ」
「よかったね」
 子どものアスカが微笑みながら言う。
「うん、ベン、出発の準備をしてくれ」
<<キャプテン、了解しました。ウオームアップ開始>>
「キャプテン、もらったタマはどうするの?」
 アスカが興味ありそうにキャプテンに聞く。
「うん、翡翠のことか。ナオが持っているぞ」
 キャプテンは振り返りナオを見た。
「そうよ、わたしが預かっているわ。わたしたちの宝物にしましょう」
「ナオ、あとで見せてね」
 ニャーと、アスカは笑う。
 子どものアスカは、翡翠が気に入ったようである。

<<キャプテン、前のアトラス小型宇宙船が動き出しました、速やかに追跡します。戦
闘艇発進>>
 ロボットのベンの声が宇宙船に響く。
「ベン、分かっていると思うが、後ろから狙っている海賊に注意してくれ」
<<キャプテン、了解しました>>
 そして、アトラス小型宇宙船に寄り添うように、キャプテンが乗る要塞のような大型
戦闘艇が続く。
 その翌日から、子どものアスカとリリー姫が、通信で挨拶を交わすようになった。そ
して、1か月が過ぎようとしていた。
「リリー、ベンが言ってたけど、今日中にも危険宇宙空域を抜けるそうよ。お別れだね」
 子どものアスカがつまらなそうに言う。
「アスカ、また合える?」
 リリー姫が言う。
「むりよ。わたしたちはサザンクロス星の警備に行くの、この宇宙船に乗っている以
上、やるかやられるかよ」
「じゃ、アスカだけでもルグール星で暮らさない。陛下に頼んであげる」
「だめよ、キャプテンと、ナオはわたしが生きがいなのよ。可哀相で見捨てられない」
「そう、でも考えててね」
「ありがとう、リリー。また連絡するね」
「うん、アスカ。またね」

<<キャプテン、あと10分で危険宇宙空域を抜けます>>
「うん、長かったな。この後、安全宇宙空域に入り、海賊が追跡してこないことを確認
してから、ワープ走行で、サザンクロス星へ行く」
<<キャプテン、了解しました>>
 その時。
<<こちら、アトラスのカカリー。迎えのルグール星の宇宙船と連絡が取れた。ルグー
ル星の宇宙船が、護衛のため安全宇宙空域で待っている>>
「それはよかった。海賊の追っても姿を見せない、もう安心です。カカリー陛下」
<<うん、ありがとう。キャプテン。何と言えばいいのか>>
「いや、無事でよかった」
<<キャプテン、それから申し訳ないがルグール星のメディアの取材を受けてもらえな
いかな?>>
「うん、どういう意味だ?」
<<前にも話したが、あちらこちらで戦いや、強奪が横行している。そして、宇宙平和
維持軍の登場。この話をしたんだ。そしたらルグール星の国営のメディアが、宇宙平和
維持軍の取材をしたいと申し出があり。わたしも断れなくて>>
 カカリー陛下はすまなさそうに言う。
「あの宇宙平和維持軍は、海賊に張ったりで言ったまでのこと」
<<そうだったのか、早まったな>>

「いいじゃないの、宇宙平和維持軍を貫き通せば」
 キャプテンの後ろからナオが言う。
「だが取材を受ければ、この大型戦闘艇の出所を追及される。そして、正当防衛といえ
ども宇宙人を15人も殺している、彼らにも親兄弟がいるだろう。恨みの連鎖が限りな
く続く」
 キャプテンは厳しい顔で言う。
「いいのよ、適当に取材を受けていれば、わたしが受けるわ。陛下、快諾します」
<<それはありがたい。ナオ、適当に誤魔化して、よろしく頼む>>
「はい、安心してください。わたしは慣れてますから>>
 嬉しそうにナオが言う。


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