「そうですね、クスリは必要以上に飲まないほうがいい。それじゃ、エトランゼ室へ」 そして、一向はキャプテンを先頭にエトランゼ室に向かった。 「ベン、このろ過装置ユニットと、宇宙食をいれる入れ物はあるのか?」 「キャプテン、あの抗菌トランスバックに詰めてください。ふたつ必要ですね。そのト ランスバックをロープの先に結びます」 「うん、宇宙食はわたしが、ベンはろ過装置ユニットをたのむ」 そして、手際よく梱包してスクーターに繋がっているロープに結んだ。 「キャプテン、ありがとう。これで無事に着ける」 カカリー国王は、宇宙服を身につけてキャプテンを見て言う。 「ありがとうございました。皆様のお蔭でルグール星へ行けます」 リリアシア王妃が笑顔で言った。 王妃と姫は宇宙服の連結紐をロープに絡ませ、宇宙服のヘルメットを被り空気圧の調 整をした。カカリー国王は、王妃と姫の安全を確認をして、宇宙スクーターに跨り別れ の手を振った。 「気をつけて、われわれは国王の宇宙船の後ろから付いて行きます」 大きな声でキャプテンが怒鳴った。 そして、キャプテン、ナオ、アスカの3人は手を振り、エトランゼ室を出る。部屋に はスクーターに跨ったカカリー国王と、そのスクーターから垂れ下がったロープに王妃 と姫が繋がり、突っ立ていた。
「ベン、国王が帰る」 <<キャプテン、了解しました。エトランゼ室、密封開始>> そして、10秒ぐらいして。 <<エトランゼ室、外扉、開放>> 「これでもう合えないのね」 暫くして、ナオが淋しそうに呟いた。 「でもキャプテン、安全宇宙空域までは付いて行くんでしょう?」 子どものアスカが言う。 「そうだ、海賊から守るためにな」 言いながらキャプテンはロボットのベンを見詰た。 <<キャプテン、ただ今3人はエトランゼ室から出て行きました。外扉、閉鎖開始>> 「うーん、終わったか。後は操縦室で見守ろう」 「そうね、まだ、何が起こるか分からないわ」 心配そうにナオが言って、先頭を切って歩きだした。
「ベン、スクリーンの標準を合わせてくれ」 <<キャプテン、了解しました>> そして、スクリーンにカカリー国王、王妃、姫の3人が映った。 「うん、今のとこ無事だな。事故も起こりそうもないし」 キャプテンは操縦席の椅子に背を寄りかけた。 「ええ、よかった。早くアトラス宇宙船に乗ってもらいたいわ」 スクリーンの中の3人はゆっくりとゆっくりと進む。 そして、飽きることなく3人はスクリーンを見詰た。
「おッ、やっと3人が宇宙船に乗ったな。もう大丈夫だ」 「よかったね」 子どものアスカが微笑みながら言う。 「うん、ベン、出発の準備をしてくれ」 <<キャプテン、了解しました。ウオームアップ開始>> 「キャプテン、もらったタマはどうするの?」 アスカが興味ありそうにキャプテンに聞く。 「うん、翡翠のことか。ナオが持っているぞ」 キャプテンは振り返りナオを見た。 「そうよ、わたしが預かっているわ。わたしたちの宝物にしましょう」 「ナオ、あとで見せてね」 ニャーと、アスカは笑う。 子どものアスカは、翡翠が気に入ったようである。
<<キャプテン、前のアトラス小型宇宙船が動き出しました、速やかに追跡します。戦 闘艇発進>> ロボットのベンの声が宇宙船に響く。 「ベン、分かっていると思うが、後ろから狙っている海賊に注意してくれ」 <<キャプテン、了解しました>> そして、アトラス小型宇宙船に寄り添うように、キャプテンが乗る要塞のような大型 戦闘艇が続く。 その翌日から、子どものアスカとリリー姫が、通信で挨拶を交わすようになった。そ して、1か月が過ぎようとしていた。 「リリー、ベンが言ってたけど、今日中にも危険宇宙空域を抜けるそうよ。お別れだね」 子どものアスカがつまらなそうに言う。 「アスカ、また合える?」 リリー姫が言う。 「むりよ。わたしたちはサザンクロス星の警備に行くの、この宇宙船に乗っている以 上、やるかやられるかよ」 「じゃ、アスカだけでもルグール星で暮らさない。陛下に頼んであげる」 「だめよ、キャプテンと、ナオはわたしが生きがいなのよ。可哀相で見捨てられない」 「そう、でも考えててね」 「ありがとう、リリー。また連絡するね」 「うん、アスカ。またね」
<<キャプテン、あと10分で危険宇宙空域を抜けます>> 「うん、長かったな。この後、安全宇宙空域に入り、海賊が追跡してこないことを確認 してから、ワープ走行で、サザンクロス星へ行く」 <<キャプテン、了解しました>> その時。 <<こちら、アトラスのカカリー。迎えのルグール星の宇宙船と連絡が取れた。ルグー ル星の宇宙船が、護衛のため安全宇宙空域で待っている>> 「それはよかった。海賊の追っても姿を見せない、もう安心です。カカリー陛下」 <<うん、ありがとう。キャプテン。何と言えばいいのか>> 「いや、無事でよかった」 <<キャプテン、それから申し訳ないがルグール星のメディアの取材を受けてもらえな いかな?>> 「うん、どういう意味だ?」 <<前にも話したが、あちらこちらで戦いや、強奪が横行している。そして、宇宙平和 維持軍の登場。この話をしたんだ。そしたらルグール星の国営のメディアが、宇宙平和 維持軍の取材をしたいと申し出があり。わたしも断れなくて>> カカリー陛下はすまなさそうに言う。 「あの宇宙平和維持軍は、海賊に張ったりで言ったまでのこと」 <<そうだったのか、早まったな>>
「いいじゃないの、宇宙平和維持軍を貫き通せば」 キャプテンの後ろからナオが言う。 「だが取材を受ければ、この大型戦闘艇の出所を追及される。そして、正当防衛といえ ども宇宙人を15人も殺している、彼らにも親兄弟がいるだろう。恨みの連鎖が限りな く続く」 キャプテンは厳しい顔で言う。 「いいのよ、適当に取材を受けていれば、わたしが受けるわ。陛下、快諾します」 <<それはありがたい。ナオ、適当に誤魔化して、よろしく頼む>> 「はい、安心してください。わたしは慣れてますから>> 嬉しそうにナオが言う。
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