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作品名:銀河を渡る船 第二部・道草 作者:佐藤 神

最終回   11

 ナオは上機嫌で、取材スタッフを見送り操縦室に姿を現した。
「あら、キャプテンはノンビリ寝ているわ。キャプテン、取材は終わったわよ」
 ナオは操縦室で寝ているキャプテンを揺すった。
「あーッ、何だか気分爽快だ。ナオ、取材はどうだった?」
「うん、皆、わたしの美貌に驚いていたわ。久しぶりだわ、カメラに取られるの」
 満足そうにナオは髪を掻き揚げながら微笑んで言う。
「そうか、それはよかった。取材スタッフの連中はこの宇宙船から離れたのか?」
「ええッ、エトランゼ室から見送ったわ」
「アスカは余計なこと喋んなかったか。お調子者だからな?」
「大丈夫よ、でもアスカは人気者だった。子どもと、動物には敵わないわ」
 キャプテンは、ナオの後ろを見渡す。
「あれ、アスカは?」
「ええッ、ボートに乗るんだってはしゃいでいたわ」
「そうか」
 キャプテンは立ち上がり、スクリーンを見詰た。
「ベン。アスカと、マザーを連れて操縦室まで来てくれ。サザンクロス星まで、ワープ
するぞ」

<<宇宙恒星日誌21080727。
 サザンクロス星へワープ走行する>>

 暫くして、操縦室に全員が勢ぞろいした。
「だいぶ遠回りしたが、楽しい記憶作りは終わりだ。これよりサザンクロス星までワー
プ走行する」
 キャプテンは、一人一人の顔を見て力強く言う。
 ナオはキャプテンの目を見ていた。いつもと違い自然体で見詰る。キャプテンもそん
なナオの目を見た。視線を逸らすことなく、二人は見詰合った。そして、キャプテンは
何を感じたのか小さく頷いた。

「ねえねえ、どうしてワープするの?」
 子どものアスカは不満そうに言う。
「うん、宇宙の治安が思っている以上に錯綜している。野蛮人以外にもサザンクロス星
を狙う輩がいるだろう。襲われる前にサザンクロスに着かないと、われわれの存在理由
がなくなる」
「ねえ、リリーは大丈夫なの?」
 心配そうに子どものアスカが言う。
「アスカの気持ちは分かるが、ルグール星が平和なのかどうなのか。われわれには分から
ない。ともかく、無事を祈ろう」
 アスカは小さく頷いた。
「アスカ、これから行く星は、わたしたちを必要としているのよ。強く生きないと」
 子どものアスカの肩にナオは優しく手を置いた。
「ベン、念のためだ、サザンクロス星から離れたところにワープせよ」
<<キャプテン、了解しました。ワープ30秒前>>
<<ワァンー、ワァンー、ワァンー>>
 宇宙船内にワープ走行の警告音が鳴り響く。
<<ワープ20秒前、みなさん、椅子に座って手すりを掴んでいてください>>
 ロボットのベンの声が宇宙船に響いた。

 キャプテンの一行は無事にサザンクロス星に辿り着けるのか。その行く手には何があ
るのか。


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