ナオは上機嫌で、取材スタッフを見送り操縦室に姿を現した。 「あら、キャプテンはノンビリ寝ているわ。キャプテン、取材は終わったわよ」 ナオは操縦室で寝ているキャプテンを揺すった。 「あーッ、何だか気分爽快だ。ナオ、取材はどうだった?」 「うん、皆、わたしの美貌に驚いていたわ。久しぶりだわ、カメラに取られるの」 満足そうにナオは髪を掻き揚げながら微笑んで言う。 「そうか、それはよかった。取材スタッフの連中はこの宇宙船から離れたのか?」 「ええッ、エトランゼ室から見送ったわ」 「アスカは余計なこと喋んなかったか。お調子者だからな?」 「大丈夫よ、でもアスカは人気者だった。子どもと、動物には敵わないわ」 キャプテンは、ナオの後ろを見渡す。 「あれ、アスカは?」 「ええッ、ボートに乗るんだってはしゃいでいたわ」 「そうか」 キャプテンは立ち上がり、スクリーンを見詰た。 「ベン。アスカと、マザーを連れて操縦室まで来てくれ。サザンクロス星まで、ワープ するぞ」
<<宇宙恒星日誌21080727。 サザンクロス星へワープ走行する>>
暫くして、操縦室に全員が勢ぞろいした。 「だいぶ遠回りしたが、楽しい記憶作りは終わりだ。これよりサザンクロス星までワー プ走行する」 キャプテンは、一人一人の顔を見て力強く言う。 ナオはキャプテンの目を見ていた。いつもと違い自然体で見詰る。キャプテンもそん なナオの目を見た。視線を逸らすことなく、二人は見詰合った。そして、キャプテンは 何を感じたのか小さく頷いた。
「ねえねえ、どうしてワープするの?」 子どものアスカは不満そうに言う。 「うん、宇宙の治安が思っている以上に錯綜している。野蛮人以外にもサザンクロス星 を狙う輩がいるだろう。襲われる前にサザンクロスに着かないと、われわれの存在理由 がなくなる」 「ねえ、リリーは大丈夫なの?」 心配そうに子どものアスカが言う。 「アスカの気持ちは分かるが、ルグール星が平和なのかどうなのか。われわれには分から ない。ともかく、無事を祈ろう」 アスカは小さく頷いた。 「アスカ、これから行く星は、わたしたちを必要としているのよ。強く生きないと」 子どものアスカの肩にナオは優しく手を置いた。 「ベン、念のためだ、サザンクロス星から離れたところにワープせよ」 <<キャプテン、了解しました。ワープ30秒前>> <<ワァンー、ワァンー、ワァンー>> 宇宙船内にワープ走行の警告音が鳴り響く。 <<ワープ20秒前、みなさん、椅子に座って手すりを掴んでいてください>> ロボットのベンの声が宇宙船に響いた。
キャプテンの一行は無事にサザンクロス星に辿り着けるのか。その行く手には何があ るのか。
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