「じゃ、条件付だ。わたしはこの宇宙船の元の持ち主、デスカラン国王にわれわれの存 在を知られたくない。そのため宇宙船の全貌を放映させない、エトランゼ室とサロンし か映してはいけない。ロボットのベンとマザーとわたしは映さない」 と、言ってキャプテンはナオの目を見詰る。 「うーん、条件が多いわね。でも、ベンがいないと言語変換が出来ないわ。どうするの よ?」 ナオがキャプテンを見詰返す。 「そうよ、ベンがいないと」 子どものアスカもキャプテンを見る。 「そういわれると、だがベンが映っていれば、デスラカンに見つかる虞がある」 キャプテンは、いい方法を考えながらベンを見詰る。 「ベンに服を着させるか。マザー、ベンの服を作るとなると何時間ぐらいかかる?」 <<キャプテン、ベンの服ですか。大柄だから1日はかかりますね>> マザーが首を捻る。 「国王、メディアの取材はいつですか?」 <<いや、メディアが勝手に話を進めて。今から30分後に、そちらの大型戦闘艇のエ トランゼの前に到着することに>> 「分かりました。どうにかしましょう。準備がありますのでこれで」 <<すまない。キャプテン>>
「マザー、ベンの服を作る時間がない。ベンをミイラのように包帯で巻いてくれ」 キャプテンがマザーを見る。 <<分かりました。ベン、医務室へ>> 「マザー、待って。15分で終わらせて、そしてわたしのメイクをお願い」 と、ナオが言う。 「ずるい、わたしも」 子どものアスカが便乗するように言う。 「えッ、子どもはいいのよ。そのままで十分綺麗よ。アスカ」 「だめ、メイクさせないと取材中にママって言うよ」 「アスカ、脅す気なの。しょうがないわね、1分だけあげる。いいわね?」 「うん、いいよ」 「じゃ、マザーに作ってもらった服に早く着替えましょう」 「えッ、何だ。その服と言うのは?」 疑いの眼差しで、キャプテンは二人を見る。 「ほら、サザンクロス星で人前に出るから、何か着る物をマザーに作ってもらったの」 「そうか、わたしのは?」 「えッ、無いんじゃないの。さあッ、アスカ、行くわよ」 ナオとアスカは、逃げるように司令官室に入る。そして着替えてから医務室へ行く。
<<ベン、足を広げて、腕を上げて。包帯を巻くわ>> <<まったく迷惑な話だ、何でこんなことしなくちゃいけないんだ>> ロボットのベンは足を広げ厭わしそうに、ドンと足を下ろす。 <<直ぐに終わるわ、いろいろ事情があるのよ。ベン>> 優しい声で諭すようにマザーが言う。 <<マザー、そうですね>> マザーの華奢な手が包帯を持ち、ニッコリ笑い瞬く間にベンをミイラに仕立てた。そ して最後に黒い髪の毛のカツラを被せた。 「すごい」 子どものアスカは感心したように言う。 「かっこいいわ、ベン。カツラも決まっているわ。さあーマザー、メイクをお願い、マ ザーのメイクは感性の違いかしら、わたしには真似できないわ」 「マザー、1分はわたしの分よ。わすれないで」 アスカはベンの包帯を触りながら言う。 <<アスカ、分かりました。ナオ、今の化粧は落とします。それと絶対に顔を動かさな いで、危険ですから>> 「分かりました」
眼にも留まらぬ速さで、マザーの手がナオの顔のメイクをクレンジングオイルで落と す。そしてファンデーションから塗り始めた。 瞬く間に基礎が仕上がり、美しさが輝きだした。そして、マザーの手が止まると、そ こには別人のようなナオがいた。その肌は真珠の光沢に負けないぐらい上品に輝き、目 の周りのラメがくすむほどであった。 そして、ナオは片肩が露に露出したドレスを優雅にセクシーに着こなしていた。 それを見た子どものアスカが、嫉妬したかのように落着きがなくなる。 「つぎはわたしよ、早くやって。マザー」 アスカは急いで椅子に座る。そして、眉間に鶸が寄るほど目をかたく瞑った。 「アスカ、分かりました。もっと力を抜いて」 残りの化粧品で子どものアスカも変身した。
暫くして、ナオと、アスカはサロンに顔を出した。 「じゃ、キャプテンとマザーは隠れていてね。わたしが仕切るわ」 ナオは機嫌がいいのか、微笑が絶えなかった。だが、キャプテンはロボットのベンを 見て笑いたくてしょうがなかった。 ベンは体中包帯を巻き、頭から黒髪を垂らし、目だけがギョロット覗いていた。しか し、ベンは結構その姿が気に入っていた。 「じゃ、わたしはマザーと操縦室に隠れているから、適当に取材を受けてくれ」 サロンから出て行こうとしたが、ドクターロボのマザーがついてこないので、不思議 に思いキャプテンは振り返る。 「うん、マザー。隠れよう」 マザーがモタモタしていたので、キャプテンは仕方なくマザーの手を掴みサロンから 出る。 「どうした、マザーもメディアの取材を受けたいのか?」 <<いいえ、キャプテン。そんなことはありません>>
そして、二人は操縦室でも手を離さず、並んで坐った。 「マザーの手はナオの手より、柔らかくて温かい」 キャプテンは首を軽く捻り、マザーを見詰た。 「キャプテン、わたしの手はどんな手術でも出きるように、作られています」 と、言ってマザーは手をキャプテンの顔の上に置いた。そして、親指と中指がキャプ テンの顔のこめかみを優しく押さえる。 「あッ、これは何の匂いだ、懐かしい匂いがする」 キャプテンは催眠術にかかったように、そのまま眠りに落ちた。
そして、ナオとアスカは、ルグール星から来たメディアの取材スタッフに囲まれてい た。スタッフといっても、若くて綺麗な女子アナと、カメラマンと、荷物運びの3人と それを見て、ナオは気落ちしていた。それにスタッフの体がいやに小さい。男の身長 が150センチぐらいで、女子アナは140センチもなく、子どものアスカと同じぐら いの身長であった。 ナオは身長が170センチ以上あるので、並ぶと頭1つ以上の差があった。そのため か女子アナは、ナオよりもアスカによく質問した。 しかし、女子アナが宇宙平和維持軍のことを質問しても、二人は話をのらりくらりと はぐらかした。女子アナもしだいに、痺れを切らし早々に切り上げ退散した。
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