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作品名:ネットカフェのマスター 作者:佐藤 神

第2回   2回目
2回目
「そうですか、こちらは夜です。おれは保育園の保育士です。
 子どもたちに、美女軍団のレナとロックは、どっちが強いと聞かれて返事に困ってい
ます。どっちが強いのかな?」
《そうなの、正体を明かされてもおもしろくないわ。わたしは帝国の帝国ホテルのメイ
ドよ。勿論、レナの方が強いわよ》
「ええッ、ほんとうに帝国なのか。信じられない。宇宙連合の中でも遠い星はメッセー
ジをワープさせて通信させているのに」
《ふん、あなたはネオのネットカフェを、よく理解していないようね》
「うん、人に言われて覗いているだけで、よく分からない」
《ねえ、ネオのネットカフェのレスポンスの速さは、宇宙の七不思議の一つよ》

「ほんとうに帝国なのか。じゃ、聞くが。帝国はスパイの監視や密告があり、暗いイメ
ージがあるけど、どうなの?」
《それは宇宙連合が帝国を悪者にするために、政治的陰謀で勝手に流している悪いイメ
ージよ。わたしたちの帝国だって、宇宙連合が帝国の資源を欲しがり、帝国の人民を奴
隷にするため、高圧的に宇宙連合が侵略してきたと言っているわ》
「そうなのか」
《それに、宇宙連合は美女軍団のことを、エロ親爺の玩具のように揶揄しているけど、
帝国ではスカイエンゼルと呼ばれ、帝国の象徴よ。万民からも尊敬されているわ》
「うん、天空の天使か。美しい。宇宙連合を代表しておれが謝る。すまなかった」
《だけど、あなたに謝ってもらってもどうにもならないけど》

「そのスカイエンゼルのレナは強くて、美しいらしいな。でも、いい歳だろう?」
《まあ、何と言うことを言うの! レナは、レナは若いわ》
「しかし、いろいろな武勇伝を聞く。若いとは思えないが?」
《うーん、レナは個人の名前ではないのよ。スカイエンゼルの隊長につけられた名前な
の。今のレナは13代目よ》
「そうか、宇宙無敵とはそのことか。もし、レナが戦死した場合。仲間の隊員が隊長と
なってレナを名乗るんだな?」
《まあ、ちょっと違うけど、そんな感じね》
「ということは、スカイエンゼル予備軍もあるのか?」
《そうよ、スカイエンゼルは帝国の希望であり、未来なの、常に最強なのよ。負けるこ
とは万民が許さないわ》
「じゃ、女帝カイヤーもそうなのか?」
《いえッ、わたしの知る限りでは、カイヤーは一人よ。影武者はいるけど》
「何、影武者だと?」
 ロックの顔が強張った。
《ええッ、当然よ。お互いにスパイを何万人も、送りあっているんだから》
「うん、スパイだらけだな」
《そうなのよ、スパイの正体が発覚して、逃げ場がなくなった時に、スパイは最後の懸
けに出るわ。その場合、必ずカイヤーの命を狙う。その全てを防ぎ切れないわ》
「うん、そのために影武者が必要なのか?」
《まあ、宇宙連合のスパイだけとは限らないけど》
「うん、どういう意味だ?」
《いえッ、わたしも詳しく知らないわ》
「そうか、反体制分子らしきものが、芽生えいるのか」
《....何で、そんなことまで、わたしに聞くの?》
「いや、何ていうか。保育園の園児たちに、真実を伝えたくて、それで根掘り葉掘り聞
いているんだ。迷惑でももう少し教えてくれないか」
《でも、土足で踏み込む真似は、止めてね》

「うん、君の広い心に感謝する。じゃ、帝国の秘密警察の存在理由は?」
《簡単に言えば、帝国の惑星間犯罪を最小限に抑えるためよ。秘密警察官には捜査権、
逮捕権、判決権、死刑執行までの権力を行使することが許されているわ。
 勿論、死刑執行の場合は、厳しい査問委員会が待っているけど》
「そうか、それで問題ないのか?」
《ええッ、問題といえば、最近はコンピュータ犯罪が増えて、その対応が大変なのよ。
ほんとうは、法律を変えないといけないんだけど、複雑にしたくないし》
「じゃ、法律をよく知っているようなので聞くが、未必の故意があれば、殺意があった
と認められるのか?」
《ええ、殺人罪に問われることもあるわ、ケースバイケースね》

「なるほど、死刑執行の話だけど。兵隊や司令官にも適応されるのか?」
《ええ、高官や、行政の長、最高司令長官も例外じゃないわ》
「それで、秘密警察庁長官という下級身分で、帝国の女帝と恐れられているのか?」
《わたしは下級身分とは思わないけど。まあ、それだけに舵取りが難しいのよ》
「それを恐怖政治というのじゃないか?」
《違うわ。秘密警察が体制の犬となり、監視や密告、反体制派の投獄・拷問・処刑など
の暴力的な手段によって統治される政治体制のことを、恐怖政治というのよ》
「そうか」
《はっきり言って、帝国にもカリスマ性のある指導者がいないのよ。高官は身内の者を
裏から便宜を図ったり、賄賂を受け取ったり、腐りきっていたわ。それを、カイヤーが
命懸けで一掃したの》
「ええッ、その話は初耳だな」
《今の帝国は、貧富の差が少ないし、ホームレスはいないわ。孤児はいるけど餓死する
こともないわ。宇宙連合はどうなの?》
「うーん」
《宇宙連合のスノー事務総長に何が出来るの、どうせ寄せ集め、何も出来ないわ》

「そうか、以前。女帝カイヤーは豪華な別荘に住んでいると聞いたが、権力者の奢りじ
ゃないのか?」
《何ともいえないわね。確かにカイヤーは週末に、別荘で書類整理をしているけど、日
夜、過酷な任務をこなしているから、いいんじゃないの。
 別荘はカイヤー個人の持ち物ではないし、秘密警察庁長官の役職に与えられた別荘で
あり、カイヤーが職を辞すれば、当然使えないわ》
「そうなのか」

《もし、帝国の思想が万民に受け入れられれば、秘密警察は消滅。そして、規模を小さ
くして、惑星間保安隊に変わると聞いているわ》
「その思想とは?」
《簡単に言えば、物欲を捨て、慈悲無き行いは慎むべき。そして、日々生かされている
ことに感謝することよ》
「そうか。宗教家みたいだな」
《宇宙連合の思想は、コインを欲し、物欲ときれいな女性に溺れる、うつけの集団でし
ょう?》
「うん、何と言うか、その通りだ」
《あなたは正直な人ね。わたしたちは宇宙連合のことを、犬、野干のごとき連中と蔑ん
でいるわ。こんなんじゃ、戦争も終わらないわね》
 ロックは不愉快そうに画面を睨んだ。


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