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作品名:宇宙の光彩プロローグ 作者:佐藤 神

第4回   4

「いよいよ来たか。ミルキーウェイ、ミルキーウェイ。了解した。これより手動操作に
切り替える」
<<了解しました>>
「ミルキーウェイ、ミルキーウェイ。味方の小型高速艇と連絡をとりたい、通信チャン
ネルをつないでくれ」
<<了解。連絡できます>>
「こちら、アッキー。隊長、聞こえるか?」
<<こちら隊長のシルビア。聞こえます>>
「隊長、小型高速艇九隻が出て来た。これより誘き出す。五分後に、ここで会おう。約
束をたがえるな。おれを信じろ」
<<了解>>
 アッキーが乗る小型高速艇は右に大きく曲り、全力で飛ばした。
「ミルキーウェイ、ミルキーウェイ。敵は何隻追ってきた」
<<四隻に追跡されています>>
「了解した。ナイン、掴まっていろ、これから急降下する。そして、宙返りして、敵の
後ろに回る」
「えッ」

 アッキーが乗る小型高速艇は、急降下して回転する。ちょうど敵の斜め後ろに出た。
アッキーはレーザー砲の引金を引いた。蒼白い光線が立て続けに放射された。そして、
敵の小型高速艇が、オレンジ色に包まれ、直ぐに燃え尽きる。二隻を撃破した。
 敵は迷走していた。そのまま敵の後ろを追走していたが、やおら上昇して、敵機目指
して急降下した。蒼白い光線が放射された。敵機がオレンジ色に光った。
「凄いわ、あと一隻」
 アッキーは直ぐ急上昇して、全速力で敵機の腹に喰らい付いた。しかし、敵機は機体
を寄せてくる、アッキーは機体を反らし、レーザー砲の引金を引いた。すると後方でオ
レンジ色が見えた。
「ミルキーウェイ、ミルキーウェイ。撃墜した四隻を確認せよ」
<<四隻を撃墜したことを確認しました>>
「了解。隊長を助けに行こうか、ナイン」
「ええッ、死にもの狂いで逃げ回っているわ、あの隊長も新人なのよ」
「何だって、経験者じゃないのか?」
「ええ、今回の調査隊の警護機は5隻だったわ。ベテランが3隻いたんだけど、すでに
撃墜された。そして、新人の男と女が逃げ帰ってきたけど男の方は、精神異常で寝たま
ま。あの新人の女の子だけが残ったの、それで、あの子が急遽、隊長になったのよ」
「そりゃ可哀相だ。助けに行くぞ」
 アッキーは顔色を変えた。そして、全速力で隊長と別れたところに戻った。
「うん、1分ぐらい早かったな。こんども下から攻撃をしかけるか」

 アッキーは急下降して奇襲に備えた。暫くすると、遠くの方から小型高速艇が全速力
で近づいてきた。
「来たぞ。下から襲いかかってやる」
 隊長機の後ろを五隻の小型高速艇がハイエナのように喰らいついていた。
 アッキーは隊長機の下を平行して飛ぶ、そして徐に機首を上げる。すると敵機の後ろ
に突っこんだ。素早くレーザー砲の引金を引き続ける。無数の蒼白い光線が連続で放射
された。すると下方でオレンジ色がパッパ、パッパ、パッパ、と三ヵ所で光った。そし
て、アッキーは敵機の上空に突き抜けた。
「隊長、アッキーだ、大丈夫か?」
<<おそいッ、何してるのよ。早く助けて>>
「隊長、残り2隻だ。母船に逃げ込もうとしている。撃墜しろ」
<<えッ、2隻?>>
 アッキーはなおも、全力で敵機を攻撃する。そして、1隻を撃墜したが、残りの1隻
はバリヤーを張り母船に逃げられた。
「クソー、1隻逃げられた」
<<えッ、アッキー、8隻も撃墜したの?>>
「そうだ、海賊の母船も攻撃するぞ」
<<アッキー、レーザー砲では効かないわ。惑星間ミサイルじゃないと無理よ。長居は
無用、引き上げましょう>>
「そうか、了解した」

 その時。ミルキーウェイが話し出した。
<<敵の宇宙船から、呼びかけがあります。つなぎますか、無視しますか?>>
「了解、つないでくれ」
<<....わたしは海賊バラクーダだ。おまえは誰だ、どこの所属だ。正規軍のパイ
ロットか、教えてくれ?>>
 地獄の底から響くような太い声が聞こえる。
「海賊バラクーダよ、おれは銀河の悪魔だ。この調査船に二度と近づくな、惑星間ミサ
イルで皆殺しにするぞ」
と、言ってアッキーは通信を切った。
「ちょっと、何気取ってんのよ。わたしのお腹の中には悪魔の子が宿るの、わたしが悪
魔の子を育てるの」
 ナインがもの凄い剣幕で怒り出した。
「いや、防衛主任が言ったもんで、つい真似して。悪気は無い」
「この、おちょうし者」
 ナインは怒って口を閉じた。アッキーは隊長機の後に続いて、科学アカデミー・地球
調査隊の宇宙船に戻った。

「アッキー、ナイン。皆さんが食堂でお待ちかねよ。ついてきて」
 一足先に着陸した隊長のシルビアが嬉しそうに笑った。そして、お互いの無事をたた
えながら食堂へ向かった。
 食堂は、いつもと違い、華やかなパーティー会場に変身していた。まるで大都会の超
高層ビルの展望室でパーティーを開いているような錯覚を覚えた。他の超高層ビルのイ
ルミネーションの輝きが眼下に見える。この会場だけが大都会に君臨する支配者のよう
に光り輝いていた。
 上を見上げると満点の星座が輝いている。いつの間に出来たのか、中二階の生バンド
が、ジャズみたいな洒落た音楽を奏でている。
「ナイン、これもホログラムが投影されているか?」
「そうよ」
 そして、アッキーとナインは、壁際の一段と高いステージの上に立たされた。
 薄暗いせいか、スポットライトが二人を照らす。
<ワワワーアッ>
 会場から歓声が沸いた。アッキーは照れながら片手を上げる。
 そして、あちらこちらに小さなスポットライトが点いた。そのスポットライトは、各
テーブルの上の飲み物や肉、野菜、果物、ケーキ類の盛り合わせを照らしていた。宇宙
船の全員がこのパーティーに参加しているようだった。
「やっぱり、アッキーは宇宙で一番強いみたいね。そのお蔭で我々は助かりました。あ
りがとう」
 ミラー統括官は喜んでいるのか、悩んでいるのか複雑な表情で言った。
「はい、勝ててよかった」
「じゃ、皆さん。宇宙海賊に勝利した祝宴を始めましょう」
 と、ミラー統括官がグラスを傾け、パーティー会場を見渡した。
 洒落た音楽が流れる中、雑談と笑い声と、食器の擦れる音が聞こえる。アッキーは夢
中で、肉に喰らいつく。その食いっぷりに宇宙人は唖然としている。そして、祝宴が終
わりに近づいた時。ミラー統括官がアッキーに質問した。

「アッキー、宇宙海賊を8隻も撃墜したけど、腕の差はそんなにあるものなの?」
「ええッ、海賊といえども、高度の文明を持った宇宙人。わたしは文明途上の地球人で
す。人間が外界の事物を感じる五つの感覚器官。目・耳・鼻・舌・皮膚、それと理屈で
は説明のつかない、第六感があります。そのひとつひとつの機能を高度の文明が退化さ
せたのでしょう。
 それに空中戦は理屈で理解するものではない、あるがままを受け入れ小型高速艇と心
を一つにする。そして、蝶のように舞い、蜂のように刺す....勝とうが負けようが
戦いとは空しいものだ」
 と、言ってアッキーは会場を見回した。だが、所詮は学者の集まり、話を聴いている
者は数人だった。

「いや、アッキー、実に見事だった。おれは嬉しいよ」
 顔を赤くして、ふらつきながら防衛主任が壁際の一段と高いステージに上りながら言
う。そして、右腕をぐるぐると回す。するとスポットライトが防衛主任を照らした。
「諸君、このアッキーと美女軍団。どっちが強い。教えてくれ?」
 防衛主任は腰を少し落とし前傾姿勢で、片手を耳に当てる。
「いくらアッキーが強くても、宇宙無敵の美女軍団。美女軍団の方が強い」
 若い男の学者が言う。
「何言ってるの、宇宙海賊を8隻も撃墜したのよ。一対一ならアッキーの方が強いわ」
 インテリ風の女が言った。
<ワワーアッ>
 その途端。会場が一気に盛り上がった。アッキーもステージに上がった。
「防衛主任、美女軍団とは何だ?」
 アッキーは厳しい表情で防衛主任を見詰た。





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