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作品名:宇宙の光彩プロローグ 作者:佐藤 神

第1回   1
 宇宙の光彩プロローグ

 おれは航空自衛隊第3航空団の第3飛行隊に所属する戦闘機F-2のパイロット。勤務地
は航空自衛隊三沢基地、名前は秋山功一。身長は180センチ,体重80キロ、イケメ
ンの28歳。
 自慢ではないが、戦闘機F-2の操縦コンテストは3年連続でおれが優勝している。学
力は劣るが、操縦技術は日本トップクラスだ。
 仲間からも一目置かれている。だが、先日の基地内祝賀会で失態を犯してしまった。
 つい酔った勢いで、本音を迸ってしまった。日本海に配置する対艦ミサイル装備のイ
ージス艦が実戦で役にたつのか、隣に座っていた同期の坂本と話す。
「あれはなイージス艦のレーダを撹乱すれば、何の役にも立たない」
 ここまでは問題はなかった。
「日本海を越えて、核搭載のミサイルが飛んで来ることはありえない。最後の切り札を
使えば、米軍が喜んで何百発と核を正当防衛で打ち込むだろう。あれは防衛省の予算確
保の戯言だろう」
 おれは酔って、口角泡を飛ばす。そして、翌日。基地指令から呼ばれ、直々に訓告を
受た。あれから、おれを見る周りの目が変わった。

 そんなことを思い出しながら、親戚の結婚式のため東京に来ている。銀座を歩いてい
たら、二人ずれの外人に道を聴かれた。おれは流暢な英語で受け答えする。別れ際、礼
にマックシェイクをもらう。それを飲んだら急に眠くなる。

 気がついたら外人の女が、おれの顔を覗いて何かを喋っていた。その女は、手にイヤ
ホーンみたいな物を持っている、何度も耳に当てる真似をしていた。
 だが、その女もすでにイヤホーンを耳につけている。そして、女は手に持ったイヤホ
ーンをおれに差し出す。おれはそれを受け取り耳に当てた。
「どうですか、聞こえますか?」
「うん?」
 おれはこれが言語変換機だと、直ぐに理解できた。そして、大きく頷いて、ゆっくり
辺りを見回す。
 白い天井、白い床、白い壁....そして、女の冷たく蒼い目が微笑んだ。身長17
0センチぐらいで、身体の線がくっきりと現れる、シルバーメタルのユニセックスの服
を着ていた。
「ここはどこですか?」
 おれは回らない頭で、その女に聞いた。
「我々の宇宙船です」
「なに、宇宙船だと、おまえは宇宙人か?」
 おれの背筋が凍った、そして、身構えて怒鳴った。
「はい、そうです、我々のコンピューターが秋山功一さんを選びました。そして、生殖
器の調査のため、あなたを地球から拉致しました」
 女の顔は陶器のように白く、ブロンドの髪がカールしている。細面で、切れ長の目、
口と鼻は小さくきれいに整っている。まるで、人形が喋っているみたいだった。
「おれを、おれを解剖して切り刻むのか?」
「いいえ、生殖器の調査のため二週間だけ、身柄を拘束します。でも生命は保証はしま
す。そして、ここでの記憶を全て消去して地球へお返しします」
「待て、生殖器の調査って何なんだ?」
 訝って、おれは思わず股間を押さえた。
「そんなに怯えないで下さい。これから説明します」
「冗談じゃねえよ、早く地球に返してくれ」
 女は秋山がこんなに狼狽するとは、思ってもいなかった。困惑した表情で秋山を見詰
る。そして、水の入った紙コップを秋山の前に差し出す。微笑みながら小さく頷いて水
を飲むことを促した。秋山は用心深く、一口飲む。
「うまい、うまい水だ」
 秋山は興奮が治まり、冷静さを取り戻す。
「地球人も水と食べ物は、我々と同じです、自由に飲んで下さい。トイレの場所も後
で、教えます。トイレの使い方もほとんど同じです」
 女は秋山を優しく見詰た。

「わたしは科学アカデミーの学者で、生態学を研究しています。そして、わたしの研究
テーマは、地球人と宇宙人の間に子供が出来るかです。遺伝医学の染色体には問題があ
りませんでした。精子と卵子の受胎から妊娠、出産、子育てをわたしの体で体験してみ
たいと、思っています。協力してもらえませんか?」
「そうですか、おれは生殖器を、とられるのかと思いびっくりしました」
「フフフッ、宇宙人でもそんな野蛮なことはしませよ。あなたの精子を研究のために欲
しいのです」
「しかし、子供を作るとなるとな」
「わたしの様な、醜い宇宙人じゃ駄目かしら」
 女は悲しそうに目を伏せた。
「とんでもない、しかし、父親として子供の将来を考えると。その、実験材料なんでし
ょう?」
「ええッ、科学アカデミーの子供たちと一緒に育てます。だけど、この子はわたしが責
任をもって育てます」
「そうですか。そこまで言うのなら、あなたの言葉を信用しましょう」
 秋山は納得したような表情で、その女の目を見詰る。
「はい。それでは、快諾と言うことで。これから科学アカデミー・地球調査隊の責任者
に会って下さい」
 その女も安堵したように微笑んだ。
「ええッ、分かりました」
 秋山は女の後に続き、広い宇宙船の中を歩いた。宇宙船の中は全体に大きく丸みがあ
り、円盤型のように思える。擦れ違う宇宙人は、女と同じシルバーメタルのユニセック
スの服を着ている。
 屈強な身体つきとか肥満体の宇宙人はいなかった。皆、スリムな体つきで、無表情で
歩いている。しかし、擦れ違いざま、秋山を一瞥する宇宙人も何人かいた。

 そして、女はある部屋に入る。秋山も訝りながら後に続く。
 部屋の中には、見られない装置が置かれていた。そして、大きな机の向こうに女性の
姿が見える。
「ミラー統括官。秋山さんをお連れしました。例の件は承認されました」
 女は背を正し、緊張した顔付きで言う。
「そう、それは好かったわね。ナイン」
 ミラー統括官は忙しそうに、モニター画面を見ながら言った。そして、ミラー統括官
は高貴な顔だちで微笑みながら秋山を見詰る。
「わたしは地球調査隊の責任者ミラーです。えーと、秋山さんのご協力を心より感謝い
たします。お礼として宇宙のことをお話しましょう。お座りになって」
 ミラー統括官は仕事を中断して、二人に近寄り、優雅に椅子に座った。そして、微笑
みながら地球人の知らない宇宙のことを、手振り身振り分かり易く話し出した。宇宙の
歴史、ブラックホール、暗黒エネルギー、ワープ航法....。
 15分ぐらいで話が終わり、ミラー統括官が立ち上がった。そして、ある装置の操作
卓のキーをカタカタと叩く。徐々に部屋の中に巨大円盤の姿をしたホログラムが投影さ
れた。

「これが、わたし達の宇宙船です。ちょうどこの辺りが、この部屋かしら」
 ミラーは、華奢な白い指で宇宙船の外部を示した。
「これが、これが宇宙船ですか。大きいですね」
 秋山は興味深そうに、その宇宙船を見詰た。
「ええッ、最新型の調査船なんですけど、直径2キロメートルぐらいかしら。300人
が搭乗しています。そして、超光速航法で宇宙を飛び続けることが出来ます」
 ミラーがもう一度、操作卓のキーをカタカタと叩く。
「これは宇宙を縮小したものです。あそこに赤い点が浮かんでいるのが見えますか?」
「ええッ、見えます」
 部屋一杯に星座が無数に散らばり、密度の濃いところや薄いところがあり、その隅の
方に赤い点が見える。
「あの赤い点がこの宇宙船です。気に入ったら、ライブラリー室でも、このホログラム
が投影できますから見て下さい」
 そして、ミラー統括官がホログラムを消した。
「うーん、秋山さんと呼びにくいので、アッキーと呼んでもいいかしら?」
「はい」
「そう、よかった。この若い女性はナインよ。優しく接して下さいね。よろしく」
 そして、ナインとアッキーは部屋を出た。





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