あの夏、確かに彼女は僕たちの世界に存在した。 「必ず私を見つけてね。私もあなたを探すから」 そう言って彼女は自分の世界に戻っていった。 「私達はそう決められていたの。だから出会った。そしてきっとまた会うことが出来る」 彼女はそんな想いを信じ、戻る決心をしたのだ。
あれから二回目の夏を迎えた。 彼女が戻る間際に書き残した”京都での国公立大会前日”その日がやってきた。 彼女は何を伝えようとしたのだろう。その日また彼女が現れるとでもいうのかと思ったこともあった。でもそんなことを彼女がするはずが無い。彼女はこの世界に残ることを良しとしなかったのだ。仮にこちらの世界に来ることを考えたって、理論的に無理なんだ。そんなことは彼女が一番良く知っている。 僕は悔やんだ。あの時、彼女の本を取りに帰らなければ、彼女が伝えたかったことを直に聞くことができたのに。彼女は代わりに僕が図書館に返した本を持っていった。そしてその一部と思われる切れ端に、あのメモ書きを残したのだ。
僕は大会主催校京西大学のグランドに来ている。明日の試合に向けた調整練習をするために。空は蒼く澄み切っている。明日も暑い一日になりそうだ。
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