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作品名:ソラ 作者:菱田カイ

第2回   アカネ
マンションのベランダで一人煙草を吸う女。

アカネは普通のの大学生だった。
週末になったら仲間と一緒に飲みに行き、煙草を吸う。
今の女性が煙草を吸うのは一般的になっているのかもしれない。

だが、最近は煙草も部屋では吸わなくなった。
部屋に煙草の匂いがつくと何かと面倒なことになる。

最近、アカネには彼氏ができた。
酒も飲まない、煙草も吸わないできすぎたような男。

その男は煙草の煙を妙に嫌がった。
普通の煙草を吸わない人なら解るかもしれない。
当時喫煙者のアカネには非喫煙者の心境が解らなかった。

でも、アカネはその男が好きだった。
顔が広くて、みんなに優しくて、でも自分にだけは「俺の彼女だから」と人一倍優しく包んでくれた。
なによりも、自分のようにふがいない女を好きになってくれた。
彼に見合う女になりたくて、周りに「煙草をやめる」と言いまわった。
料理も勉強して、彼にふるまった。
掃除もきちんとするようになった。


だが、結局は煙草をやめなかった。
これでいいのかと思いながらも、ベランダで空を見ながら煙草を吸うのが日課になった。


「煙草はやめられない」

そう言われればそれまでかもしれない。
でも、その言葉とは違う何かがあった。

料理をふるまい、服にも気を使うようになった今、自分が自分じゃなくなったような気がした。
この煙草を吸い続けることによって、今までの自分の意義を存在し続けるため。
または、それを言い訳にしたかったのかもしれない。

今日も夜空を見ながら彼女は煙草を吸う。
星も見えない大都会で、必死で自分の存在意義を問う。

いつまでこの嘘が続くかわからない。
今の自分が、いつこの煙とともに消えてしまうかわからない。

彼女は考える。

今と昔、どちらが本当のワタシ?


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