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作品名:新宿アルタ 作者:山野 高雄

第3回   3
昼から全学部合同の同級会があった。美枝子が来ていた。大学を卒業して30年、私よりもはるかに若く見える。
美枝子は大学を卒業すると同時に内科医と結婚。5年後には夫婦でアメリカのピッツバーグ大学に留学、夫はガンの内科治療を習得、美枝子は同じ大学で心理学の研究生になった。10年後に帰国すると、美枝子は大学講師としてカウンセリングを教え、亭主は八王子に内科クリニックを開業した。
私は美枝子と、30年ぶりの再会の挨拶もそこそこに訊いた。
「渡辺という新宿のホームレスを覚えているか」
「知っている。何度も新宿のフォークソング集会で一緒になったし、夕食をごちそうになったこともある」
「渡辺は、キミに花束をもらったきりで、その後は会ったことがないそうだ。どうしても、もう一度会いたいので、新宿東公園で30年も待ち続けている。ホームレスになっても、毎日毎日、キミとの再会を待っている」
「ウソだよ。渡辺は若い時からウソつき。外科の医局にいたのに、メスを持つどころか、こわくて注射器も持てなかった。それなのに、自分が一人で手術を成功させたと吹聴するから、外科にはいられなくなった。それで内科に来たけれども、口先ばかりで手先が不器用だから内科もダメ。最後には解剖学か法医学に行ったみたい」
美枝子の夫は渡辺と同じ医科大学なので、美枝子は渡辺の消息に詳しかった。

夜の同級会は学部別の同級会であった。私は、美枝子が10年の留学中アメリカ社会で学んだ、華やかな交際術を見ていた。


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