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作品名:新宿アルタ 作者:山野 高雄

第1回   1
反安保闘争の時、新宿駅内外には毎日毎日何万人もの学生が集まった。あれから40年、私が特急バスで早朝に新宿に着き、久しぶりに新宿東公園に行くと、公園の大部分は自動車用道路に割かれてしまい、ホームレス一人分のスペースしか残っていなかった。
一人っきりのホームレスは、車の騒音とアルタの街頭TVに起こされ、ゆっくりと枕元の作業服を着た。ベージュの作業服には、新宿区、の文字が縫い込まれていた。寝具を公園の手すりにかけ、それと持ち物全部を青シートで被い隠した。非常に緩慢な仕事であった。区役所職員が念入りに公園の清掃をしているようであり、公園に住み着いたホームレスの朝一番の仕事には見えなかった。

私は新宿東公園のホームレスに見覚えがあった。40年前、新宿駅地下道のフォークソング集会に、私は美枝子を連れて行った。美枝子は、その夜は生花教室に行く予定があって、大きな花束を持っていた。フォークソングを全身で歌うのには花束が邪魔であった。美枝子は、隣の男が身体を動かさずに歌うので、花束を持っていてくれるように頼んだ。歌の合間の会話から、私と美枝子は、男が医学部をめざす3浪ということが分かった。美枝子は集会の終わった後、男に激励のつもりで花束をプレゼントした。
私には、東公園の男は何年浪人しても医学部に合格できず、家族から見放され、ホームレスに転落したように見えた。


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