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作品名:詩群2・春が訪れる 作者:砂野徹

第9回   さよならの歌
 

            つかめない明日のルージュ
            かくせない昨日の涙
            帰らないあいつの姿
            書きとめるインクは無い

            遠い夜の寒い背中
            風にゆれるゼラニウム
            平らにできぬ毛布のくぼみ
            いつもきこえた寝息
            手を伸ばせば今もとどきそうな
            光る白い雲

            ためいきを空に飛ばして
            思い出を胸にたたんで
            旅人が渡してくれた
            新しいシャツを使おう


            折れた標 消えた名前
            たどれない翼の轍
            貝殻ならば残るけれど
            煌きは走り去る
            呼んでみてもはじかれた言葉は
            むなしさのこだま

            まぼろしを星に散らせて
            やさしさの舟にゆられて
            街角が色づく頃に
            口笛の丘へ歩こう
















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