つかめない明日のルージュ かくせない昨日の涙 帰らないあいつの姿 書きとめるインクは無い
遠い夜の寒い背中 風にゆれるゼラニウム 平らにできぬ毛布のくぼみ いつもきこえた寝息 手を伸ばせば今もとどきそうな 光る白い雲
ためいきを空に飛ばして 思い出を胸にたたんで 旅人が渡してくれた 新しいシャツを使おう
折れた標 消えた名前 たどれない翼の轍 貝殻ならば残るけれど 煌きは走り去る 呼んでみてもはじかれた言葉は むなしさのこだま
まぼろしを星に散らせて やさしさの舟にゆられて 街角が色づく頃に 口笛の丘へ歩こう
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