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作品名:迷路の戦士 作者:砂野徹

第9回   9

同時刻。
2階廊下。スミレは潜水漁師のように片手にヒートスティックを
持っている。セフキープ4号はピストルを持っている。前方にトンボが
浮いており、
「セフキープ2号です」
と告げた。角を曲がると2号が待っており、
「コッチニオオキナヌケガラガアリマスキテクダサイ」
「ああ、順路だからな」
しかしスミレは立ち止まった。空機隊のマニュアルに
〔敵に案内されてはならない〕とあるからだ。
ヒートスティックのスイッチを入れると2秒ほどで
ボウッと赤熱し、そして白熱した。
「トンボそこを動かずに聞け、今すぐ外に連絡に」
バキーン!
トンボはセフキープ4号に撃たれた。
同時に、スミレのヒートスティックはそのピストルを突いていた。
垂直振りのバックスイングと同じ動きで、後方の的に当てたのだ。
トンボの位置を指定したのはピストルの位置を指定するためである。
ドオーン!
セフキープ4号の右手首を中心に直径2メートルほどの爆炎が
膨らんだ。

同時刻。
外。
消防男「今の音は暴発だな。何かの破片を銃口にくらったかな。
(ウォーカ隊長に)外の戦いではなるべく街を壊さんでくれよ」
隊長「ウム・・・まずは冷却弾だ。節足動物はそれで動かなくなる」
ミラプラ独白
(ビルが崩れて外装だけが残れば我が社のプラスチックの優秀さが
 証明される。土台だけプラスチックにしたのが幸いした。
 生産が足りなくてたまたまそうなったのだが。)

同時刻。
2階。
廊下は銃の破片、墜落したトンボ、たなびく煙で戦場の様相だ。
スミレはスティックでセフキープ4号を何度も突いたが決定打に至らない。
右手首を失った4号は後退を続け壁にぶつかると、両肩の突起から
濃い紫の霧を激しく噴射した。スミレは吹き飛ばされて斜めに壁にぶつかり、
その肘が窓ガラスを割った。紫の霧は揮発性で見る見る消えてゆく。同時に
スミレは長年風雨にさらされた金属器のようにボロボロになってゆく。
「これは何だ?」
「イレーザーミスト」
4号の言葉が終わる前にスミレの胴が折れて、上半身はさかさまに落ち
頭が床に激突してぐしゃりと潰れると錆の煙が放射状に広がった。
     

○メタモルパック○

セフキープ2号
「トンボヲ完全二消シテオケ弾痕ガアルカラナ」

-----------------

同時刻。
小型自動車が街を走ってくる。研究員三人が乗っている。
「うまくいくのかなあ」
「少なくとも俺たちの記念碑は残りますよ」
「ちょっと大きくなりすぎたけどね」
「ビル内の改築が楽で助かった」
「しかし改築屋はなぜ居残ったんだろう?」
車は到着し、塀の入り口を入って、止まった。
研究員
「改築屋が今ビルの中にいるんですよ」
ミラプラ親子
「なななな中にいるのか!」
研究員
「住居へ相談に行ったら書き置きがあって・・・」
ミラプラ親子
「どういうつもりだ奴は何者だ!?」

同時刻。
地下室。
モクドは鎧のパーツに大きなスポイトみたいな物でなにやら
注入している。
「これが固まればできあがりだ」

同時刻。
外。
ミラプラ独白
(おかしい!消防も軍人もちっとも驚かないぞ)
消防男・軍人独白
(ミラクルプラスの反応は過剰だな?)

ややさかのぼる。
2階。アヤメだけがやってきた。ネコとアザミはヒョウと合流するため
地下室への近道をとり、爆発音のためアヤメが派遣されたのだ。
セフキープ4号がつかつかと歩み寄る。2号はいなくなっている。
「今の爆発は何だ?」
「デカイ奴ガマタアラワレタンデスヨ。
 ガスヲ吹キツケラレテ金属機ハ消滅シマシタ」
「嘘つくなその胸のヒートスティックの打痕を説明できまい」
「ナルホド」
アヤメはライフルと頭部銃で4号の両肩の突起を吹っ飛ばした。
「そこが噴射器だろう」
4号の両肩からイレーザーミストが垂直に
ブシュー
と噴き上がった。同時に、背中の大きな箱の底面が開いて
ボッ
と白い炎を吹くと、飛び上がった。階段付近の吹き抜けで、
天井まで7メートルぐらいある。
「逃がすか!」
アヤメが推力噴射口を打つと
ドグアーン!
ものすごい音とともに4号はバラバラに散らばった。推進剤の暴走である。
落下し散乱するセフキープの破片。その中に大きな鞄ほどの包みが転がる。
「メタモルパック(階段や家具などの形にふくらみ建材液を注入)だな。
 何の形だろう」
バリリと開くとたちまち勢いよく
ビュルルル!
と弾けるように伸び広がり奇怪な敷物のようになった。
6メートル四方ほどもある。タテヨコに連なるパターンはドーナツと棒と
てのひらを組んだような形。
「4階の障壁と同じだ!」


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