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作品名:迷路の戦士 作者:砂野徹

第8回   8

同時刻。
3階廊下。
ネコチームが階段へと歩いている。
アヤメ「スミレは我々が支えて飛びますか?」
ネコ「わずかな移動だが不利を重ねるのは避けよう。
   スミレはトンボBとともに階下のヒョウ隊と合流しろ」

同時刻。
1階廊下。
セフキープ1号「ドコヘ行クノデスカ」
ヒョウ「消火装置の大元を止めるんだ」
ヒョウが天井の或る四角を開きなにやら入力するとやや離れた壁の
トランプほどの一部が開いて、そこにもテンキーがある。
操作が終わると
ピーッ
という音が完了を知らせた。
レタス「無線がまったく届かないのは妙ですね。ずっと試してるんですが」
ヒョウ「とにかく予定を実行する」
ヒョウ隊は、体重を消す程度に推力を使う飛び歩きで風のように進む。
セフキープの
「タマゴハサガサナインデスカ?」
という問いに最後尾のトンボが
「地下室へ行くぞ」
と応えた。


○疑惑・泥の壁○

同時刻。
三階。階段の踊り場。
ネコ「スミレはヒートスティックを伸ばせ」
スミレは最初の煙幕で全身が汚れ、胸部と頭部は差し替えたものの先ほどの
銃撃と損傷と砂煙の汚れで、ひどく傷んだ姿である。覆いが外れた顔のみ
明るい色で無傷で綺麗だ。背中の薄い箱(推進器ユニット)の上に30センチの
棒が横に二本、ヌンチャクのように載っており、スミレがそれを外し二本を
つないで捻ると、
カチッ
という音とともに先端から黒い金属棒が20センチ伸びた。
つまり全長80センチで先端20センチが黒く細い。
「行こう」
下りの階段をセフキープ4号に続いてスミレが下りてゆく。
一機だけとなったトンボもついて行く。

ネコ・アザミ・アヤメは階段を上ってゆく。
ネコ
「セフキープ3号が狂ったのは変だ」
アヤメ
「電脳には耐震装置があるし、彼らの胸は別パーツのモニターで
 守られてますからね(胸の四角が開いてテンキーとモニターがあらわれる)」
アザミ
「総重量20数キロのスミレの弾かれ方から見ても、
 あの程度の打撃で壊れるのはおかしい」
ネコ
「それに、3号がどこから撃たれたかわからない。我々が着く前には
 床にも壁にも穴は無かったんだ。
 だから様子を知らせるためあっちにトンボをつけた」
「あっ!」
四階への入り口は奇怪な障壁で閉ざされていた。上下3メートル
左右2メートルほどの、スズメバチの巣の表面に似た、でこでこのゆるい曲面、
泥の城壁とでもいうものが行く手をぴたりと塞いでいるのだ。よく見るとその
でこでこパターンは20センチ程の、丸と棒と細長い手のひらをつなげたような
或る形の連なりである。
「こんなに大きな物を短時間で作るとは驚くべき速さだ。
  粘液が速乾性としても、
最長で9分3秒(前回ここを見てからの時間)しかなかったのに」
「やはりたくさんいるのか」
「しかしなぜ我々を閉じ込める?
 まさか人語を解して駆除を知ったわけではあるまい」
「突破しますか?」
「反撃があるだろうなあ」
「ここで闘うとだかい奴が外に出る恐れがある。
 上への通路は他に無いし・・・・下りるしかないな」
下降しながらネコは呟いた。
「あの模様パターンどこかで見た形だ」


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