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作品名:迷路の戦士 作者:砂野徹

第7回   7

同じ頃。四階。
ネコ「いきなりお出迎えとは、奴ら外へ出たがっているのか?」
スミレ「でかい奴もたくさんいるのかな」
アザミ「どうします?」
ネコ「弾数が5割になるまで強行しよう」
その時、足の下から
★ドコッ★
という音が聴こえた。
ネコ「今の音源は?」
セフキープ「三階デス位置ハホボ真下」
ネコ「行ってみよう」
ネコは階段空間を垂直に降りて、その部屋に入った。事務室だ。砂煙が
たなびいて、机と椅子の配置がひどく乱れて、一基の椅子は倒れている。
その傍にセフキープ3号(腹に3と書いてある。三階に居るのが3号)が
片膝と片手を床についている。胸の四角が割れて、黒く細い煙を噴いている。
「出たか何匹だ?」
トンボAが遅れて部屋に入った。3号は答えずに銃をネコに向け二発
発砲した。発砲前にネコは胸の推力を噴かして後方空転した。弾は右肩と
ヘルメットに浅く当たり、表層が砕けて破片が散った。
「狂ったか!」
,ネコは空転にひねりを加えて着地するやいなや背中のメインノズルで
セフキープを吹き飛ばした。彼がもう一発撃った弾はこのためかトンボに
命中した。態勢を立て直した3号は体全面に集中砲火を浴びて蜂の巣と
なった。花トリオがほんの4メートルのところに並んで頭部と手持ちの銃を
撃ちまくったのだ。3号は踏まれたクラッカーのように破片を撒きながら
ガラガッシャムと倒れる。同時に、トリオとの中間あたりの床が
バキーン!
と割れ弾けて、ビルイーターの口吻が突き出し、それは花トリオの方を
向いたかと思うとテニスボールほどの球を噴き飛ばした。テニスの
スマッシュほどの速さで。スミレは顔を撃たれ後ろへひっくり返った。
スリバチ型の覆いはばらばらに割れて、蝶のようにひらひら踊る。
重く硬い球は着地して
ドコッ
と鈍い音をたてた。


○地下室モクドの工作・白と黒の法則○

同時刻。
地下室
「さて、どうやって脱出するかな」
モクドは床に胡座をかいて、単椀台車に語りかけた。
モ「なにしろやつら銃を持ってるからな」
台「銃は危険です」
モ「こっちにあるものは?」
台「塗料と接着剤と建材と工具です。ロボットは私ソロアームと掃除機」
モ「とりあえずヨロイを作ろう」
モクドがノートパソコンをいくつか打鍵すると、ケーブルでつながった
1メートル立法体のメカが点灯してブーンと唸りだした。
さらにキーボードになにやら入力すると、立方体は上下ニ分割の上部が
ゆっくり自転を始めた。四角く大きな臼のように。

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同時刻。
4階から3階へ、セフキープ4号が歩いて下りてくる。
3階の事務室では、スミレを撃ったビルイーターの口吻はすぐに床の中に
引っ込んだ。
スミレ「また逃げた!」
アヤメ「変な習性だな」
ネコ「自分から攻撃してすぐ逃げるとは・・・隠れていればよいのに」
スミレは頭部覆いを失って、直方体の中央に単眼、眉間に短い銃身という
顔だ。3号の正面に居たため夥しく被弾して表層はボロボロである。
アヤメとアザミにもいくつか弾痕がある。そこへ4号がやってきた。
「アッ3号!ナゼ撃タレタノカ?」
「データを見ろ」
アザミが小さなデータカードを一枚自分の後頭部から取り出して渡すと、
4号は自分の頭に差し込んだ。
「ナルホド3号ハ、コノ玉で胸ヲ撃タレテ電脳ガ狂ッタ」
床の玉を拾い上げる。
MDの認識では味方は白、敵は黒、白の白は白、白の黒は黒、黒の白も黒、
黒の黒は不明、白の中で人間を最も守るとなっている。
「コンクリート粉末ヲ粘液で固メタモノデス」
「物騒だな。スミレ、銃を(私に)渡せ。
 頭部弾丸もアザミとアヤメに分けろ暴発の恐れがあるからな。
 推進剤もみんなに分けろ胸ノズルが割れて飛べないから」
スミレは頭から弾装箱を引き抜くとアヤメの銃に接合して弾を移動させる。
ガガガガ・・・
と音がする。ここでは弾数・エネルギー・推進剤のうちひとつでも
半分未満になると〔弾数が5割を切った〕という。アザミは墜落した
トンボからデータカードを抜いた。
ネコ「ひとまず引き返してキャプテン(消防男)の指示を受けよう」

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○メカ〔パラソル〕・消火装置停止○

同時刻。
地下室。
四角い臼は回転を止め、その中心の水筒のような部分がにょきりと伸びた。
モクドはそれを抜くと、パカッと縦割りに開いた。中からはなにやら白い、
微妙な形のヒトダマみたいなのが数個飛び出した。次の瞬間、ヒトダマは
キュッと平たく収斂して身体各部を覆う鎧パーツとなった。
モクドがそれを並べてチェックしながら単椀台車に
「ソロアーム着替えろよ」
と言うと台車は
「パラソルですね」
と応えて部屋の隅の箱の扉を開いた。中からカニのようなメカが這い出した。
中央十文字に細長い腕が生えた、先端に手があるヒトデみたいなものだ。
台車から太くたくましい単椀を外すと、自分が代わり接合して
細密作業メカとなった。


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