20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:迷路の戦士 作者:砂野徹

第12回   12

冷却そのものはダメージではないがセフキープはバランスを失った。
姿勢制御ノズルが無いから墜落するしかない。それを見たレタスは
ライフルを捨て、頭部両側面の耳のような銃器もポコンポコンと外して
捨てた。ウォーカ隊はそれを武装解除と認め、各機中腰で構えていたのを
自然体に戻した。セフキープは塀の外に背中から墜落して交通事故の
ような音をたてた。背中の箱が砕けてなにやらボウンと飛び出した。
それは塀の入り口付近までとんで、ボワワンとふくらむとビルイーターの
抜け殻となった。
軍人「なんだいあれは」
消防「作り物さ」
ミラプラ「も、もうだめだ」
「違法かつ危険な機体なので停止させる」
警官MDは立ち上がろうとするセフキープの胸を長大な
ヒートスティックで貫いた。

----------------

同時刻。
ビル内の小さな部屋。
残り一機となったセフキープ、2号はたくさんのケーブルを体につないだ
姿で計器的メカとつながっている。
「館内のカメラ・マイクとも感度良好。証拠ヲ消シ目撃者ハ
 買収スルコト」
指令を復唱するものの実現できるかの判断力は無い。そこへ電話が
かかってきた。
「計画は中止だ。妨害電波を止めろ」
「了解」
ビル外壁の電話を使っての研究員からの連絡である。
彼は消防・軍人・そして記者たちに顔を向けると
「全部説明しますよ」

公園の街頭テレビ。
「臨時ニュースです!RK31区第四キューブの
 通称虫ビル事件の全容が明らかになりました。
 大ビルイーターはロボットで一体だけであり、
 ミラクルプラスが自社製品を売るために・・・」
その公園の脇を一台の中型トラックが走ってゆく。
側面には翼の生えた鍵、ミラクルプラスの
マークを見せている。リトルサンを運んでいるのだ。

--------------

地下室。
空機隊が階段を下りてきた。モクドは鎧を装着した所だ。
トンネルを指差して
「行け」
と指示するとビルイーターはダッシュして壁の大穴に飛び込んだ。
しかし新たに加えられた長いツノはトンネルの直径に収まらず、
脆くもボキボキすべて折れてしまった。角の中身は接着剤であり、
それは蜂蜜のように伸びひろがりたちまち硬化しビルイーターを
トンネル内壁に固定した。モクドはビルイーターに説明する。
「その接着剤の強度は鋼鉄と同じだ逃げられん。
 俺は空加(空間加工士)の特級だから準空機隊員なんだよ。
 昨日からミラプラに協力したのは調査と保身のためだ」
トンボが驚いたのもビルイーターを欺くための芝居であった。

-----------------

ビルの外。
中型トラックが到着した。荷台後面が開いて、二段ベッドのような
内部からリトルサンが次々に降りてくる。一メートルあまりの半球に
サザエのようにツノが螺旋状に並んだメカで、下部は四輪で、段差を
越えるための脚が底面に畳まれている。総数12機。ぞろぞろと
ビルの中へ入ってゆく。ヒョウとネコはもう玄関の外に居てそれを
見送る。二人ともリープジャケットはボロボロになり、というより
黒っぽい内服姿にジャケットの痕跡をまとっている。
キャプテン「ひどい格好になったな」
ヒョウ「ビルイーターの自消滅の巻き添えですよ」
ネコ「あっ!あのマーク」
ヒョウ「ん?」
ネコ「障壁のパターンよ」
トラック側面のミラプラマークのことだ。
キャプテン
「あー・・・デザインを思いつかなかったんだろう。
 一日も早く株価を上げたかったんだな」

ビル内部。
各階に散ったリトルサンが角の先の穴から激しく熱気を噴きながら
巡回を始めた。陽炎があふれて、廊下や部屋の柱や窓の長方形が
たよりない形にゆらめく。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 3403