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作品名:迷路の戦士 作者:砂野徹

第11回   11

部屋の中は砂嵐。MD4機が空中から一体のビルイーターにノーマル弾と
散弾の乱射を浴びせていた。無数の浅い弾痕で背中のバラスト層は半壊し、
頭部もボコボコである。その頭部中央から黒い液体が飛び出し
キャベツの近くで
ボン!
と膨らんだ。煙幕である。ビルイーターは向きを直角に変え、ダッシュして
壁のトンネルに逃げ込む。MDたちはその後ろから銃撃を続けるが、床から
伸びた6本の口吻が次々に弾を撃ち出した。その一発がキャベツの胴に
当たると弾の方が砕け、紫の煙が機体を包む。
「これは風化促進剤だ」
キャベツは見る見るうちに錆の塊になってゆく。ビルイーターは逃げて
しまった。レタスとキャベツとアザミは6は口吻を撃ち続けるが、これも
床砂場に引っ込んだ。

トンネルの中ではビルイーターの尾部が上向きに動きそこに噴射口が現われ
推力を噴かした。尻を光らせて滑るように飛んでゆく。前方に明るく出口が
見えると噴射を止め、トンネルから床に降りて足でブレーキをかけた。
ガリガリガリ!ザザザザ。
そこは例の地下室である。
モクド「また修理だな」
トンボ「何っどういうことだ」
「こういうことさ」と言いながら四本腕の台車ロボットが水鉄砲のような
ものでトンボを撃った。瞬間接着剤である。
トンボは固まって壁に貼り付いた。
「ビルイーターはロボットで改築屋とミラクルプラスは
 仲間だったのか!」

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1階。
ヒョウは叫ぶ
「ネコ入るな風化剤だ。破れた窓に風圧をかけろ」
キャベツを失ったヒョウ隊と、アザミはその窓と逆方向のドアから部屋を
出て、部屋の外三面の廊下を飛んでネコのところに来た。ネコは窓に背を
向けて窓に緩く推力を当てている。セフキープ1号は風圧の中不器用に
窓から出てきた。近くにデミストが一個ある。
ヒョウ「この床の窪みは?」
ネコ「こっちの一匹が逃げた跡よ」

これまで、口吻だけ現われて攻撃されて引っ込んだのはすべて
〔口だけビルイーター〕であった。本体はうずくまった人間ほどの大きさ
である。口の中から小型カメラで敵を狙う。カメラは光らないので外からは
見えない。金属製で、証拠を残さないよう自消する。

一方地下室ではモクドがビルイーターの修理を終えていた。あらかじめ
作っておいた部品を貼り合わせるだけの作業である。今度は背中のツノが
長大で牛の角のように弓なりに前方を向いている。全高2メートルを越える。


ビルの外から消防キャプテンの大声が聞こえる。
「データコインをよこせ」
そこは玄関から見通せるのだ。
ヒョウ「みんなコインを出せ。そこのデミストも」
デミスト「はーい」
その大きな厚い円盤の上面の長方形がせりあがって、現われた側面から
コインが半分にょきりと出た。
セフキープ「エッ!デミストニデータガアルノカ」
デミスト「僕にもカメラとマイクがあるんだよ
外見からはわからないけどね。
噴霧と同時に監視を始めるパスワードが841309」
セフキープは足速にデミストに近寄ると状態をかがめて両肩の突起から紫の
霧を噴きつけた。メーカーは私企業でも管理は消防署が行なうことを
ミラクルプラス側は忘れていたのだ。噴きつけられた紫の霧はデミストの
上面で跳ね返って乱れ散ってゆく。ヒョウは左手だけで操縦桿を握って
後ろへ飛びながらセフキープの胸をピストルで撃った。撃たれたロボットは
胸部全面の外装をバラバラに割られ破片を散らしながらのけぞりつつ右手の
銃を乱射した。それはアザミに命中し、全身ボロボロに劣化していたので
胴を打ち抜かれ、
ボウウッ
という鈍い音とともに爆発した。胸ノズルが前に飛んでゆく。
イレーザーミストは不規則に散ったのでアザミだけが濃い部分をかぶって
いたのだ。また、玄関から外を見通せる場所であり、その時セフキープの
背後遠くに火炎放射ロボットがいたためアザミは射撃ができなかった。
「レタス闘え他は退けッ」
ヒョウの命令で空機隊はビルの奥へと飛んでゆく。セフキープは斜めに
のけぞった態勢のまま背部推力を噴かして外へ飛ぶ。レタスも追って
二機はビルの外へ飛び出すと斜め上に舞い上がった。そこには軍の
二足銃砲ウォーカ隊と火炎隊が散開して待っている。消防キャプテンは
軍人とともに装甲車に非難していた。
消防「どっちが狂ったかわからんから両方を撃て」
軍人「狙撃せよ!標的飛行中の二体!」
レタスは不規則な起動でななめに下りてくるので追尾できない。
セフキープは単調に飛んでゆく。最も近いウォーカが狙い撃った。
命中し
ポポーン!
と軽い音。セフキープは白い濃密な雲に包まれる。
「なんだあの弾は?」
見上げてつぶやいたのはミラプラの研究員で、仲間二人を乗せた小型車を
運転している。玄関内で撃ち合いが始まったとき車で逃げ出し、塀の外を
ぐるりと走っているのだ。
「冷却弾だな」
これは周囲を見張っていた警官ロボットの言葉。
「あのメカドール、民間では使用禁止の推進剤を使っている」


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