「出ました。是非採用してください。」とやっと最初の笑顔を取り戻して結城は言った。 「採用通知は1週間後郵送で通知します。」 と部長は結城に説明した。
2 面接が終わると夕子は自分のデスクに戻った。すでに午後の3時をまわっていた。豊製薬は5時の予約だったので、まだ時間はあった。電話が入っていたのでその対応に追われた。勝山みどりが来て、面接の内容を聞いた。夕子は総務部長に一任したと言った。みどりは人物評価を聞きたかったので、夕子は適当に答えた。自分の感情が入ると、面倒になるからだった。みどりはその方面では固執するほうだった。時々二人は不愉快な思いをしていた。みどりは夕子が男性には興味がない、仕事だけが生き甲斐だと他の女子社員に言っていた。それを夕子は承知していた。自分もその通りだとよく思った。しかし、ただ男の噂話をして時間を無駄にするのが嫌いなだけだった。みどりは反対にそれが好きなだけだ。 それにしても、夕子は面接の結果を総務部長に一任したわけでなかった。明日石田課長が来れば総務部長と3人で話し合うことは前もって分かっていた。ただその前に内容をみどりに話してしまうと社内に噂が広がってしまう可能性があった。やはり黙っている方が得策だった。 みどりは仏頂面でパソコンに向っていた。感情が表情に出るタイプだった。彼女の機嫌が悪いことは夕子には分かった。彼女はメールを確認しながら、時々みどりの方に一瞥を投げた。まだ営業の男性たちは誰も外出から戻っていなかった。みどりは電話が鳴ると受話器をとり、相手の用件を聞いてメモをとっていた。その間別の電話が鳴ると、夕子も対応に電話に出なければならなかった。顧客の質問に答えたり、制作部に電話を廻したりした。
|
|