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作品名:当世女性気質 作者:石田実

第6回   6
「そうですね。人間関係ですかね。思うように仕事をさせてもらえません。上司の意見に従わないと、いくら実績をあげても認めてくれないのです。計画通りやってないと言われます。まあ上司とうまくいってないのが現状でしょうか。」と青年は暗い顔になった。
「『大日広告』と言えば、私も何人か知り合いがいます。かなり年齢が高い人が多いと記憶しています。若い人は何人ぐらいいるの。」と夕子が口を出した。
「20代は3人です。営業だけですが。あと30代は5人ほどでしょうか。最近採用していません。だから僕らの下には誰もいません。」
「へー、平均年齢高いのね。若い人がやる気なくすわね。辞める人もいるの。」
「ええ、今年は3人辞めました。」
「え、そんなに。何が原因かしら。」
「会社の将来性もありますが、直接には人間関係だと思います。」
「大谷さんという評判の人がいると聞いていますが、その人が原因かな。まだ部長でしょう。社長は何も言わないの?」
「社長は状況を把握していないでしょう。役員に任せてもいます。役員は部長に遠慮しています。」
「大谷さんはよそから来たのでしょう?」
「ええ、食品会社の宣伝部から来ました。社長は義理があって社員にしたのです。」
「それじゃあ社長も大谷さんの評判を聞きながら、辞めさせられないのでしょう。」
「そうかも知れません。上の人の事情は分かりませんが。」
 夕子と青年の会話は在らぬ方向に進んでいった。彼女は青年に興味があると同時に『大日広告』の社内事情にも興味があった。時々競合になるこの会社の噂は耳にしたが、青年の話から事情が少し分かった気がした。そしてこの将来のある青年に多少の同情を感じた。うちにくればもう少しはやる気を出すに違いない。自分が指導してもやりたい。いや一緒に仕事をすれば楽しいに違いない。
「それであなたはどんな仕事がしたいの?」と夕子は訊いた。
「何でもします。特に言えばウェブ系がしたいです。この会社にはクリエイターがいますか?」
「現在は2名います。これからも増やします。」
「そうですか。僕も知り合いがいますので紹介したいです。」
「それであなたは、結城明君というのね、今の会社は何時辞めるの?」
「いつでも辞められます。引継ぎはしなければならないので一ヶ月後には、自由になれると思います。」
「うちで働く気は出ましたか?」


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