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作品名:当世女性気質 作者:石田実

第58回   58
「そうだね。ゆっくり泳げばいいんだ。少し休もう。」と結城はみどりのそばに腰を下した。その日は、中学生や高校生が数人泳いでいるだけだった。プールの半分は空いていた。コーチの先生が生徒にハッパをかけている。ストップウオッチを手にして、タイムを計っている。それを見ながらみどりが言った。「私たちもタイムを計って見ましょう。あの柱の時計をみながらでいいから。」とみどりは言った。「でも、少し腹筋と背筋それに腕の筋肉をつけないと。女だから腕の筋肉はいいけど。」
「そうだね。筋肉が弱っているかな。普段はあまり使ってないから。脂肪の方が付いちゃってる。」と結城は言ってお腹のまわりを見た。手でつまむと、大分脂肪が付いていた。「ねえ、そえじゃあ私から腹筋運動するので、足を持っていて。」とみどりは床に寝そべり足を投げ出した。結城は彼女の足首を押さえて、みどりが腹筋運動で、上体を起こしたり、また後ろに倒す時、脚が動かないように押さえた手に力を入れた。彼女の肉付きのいい脚を見ると、彼は欲望を感じた。「あら、ダネだわ。どうしても膝が曲がってしまうわ。結城君、膝も押さえてくれる。」みどりの何気ない言葉に、結城は躊躇したが、片手を伸ばしてみどりの膝を押さえた。それでもみどりが身体を起こすときに膝が曲がりそうになる。彼は更に力を入れて押さえねばならなかった。みどりは数を数えながら、二十まで腹筋運動をなんとか繰り返すと、苦しそうに上体を後ろに倒し、そのまま床に付けて、「あー、苦しいわ。」と言った。彼女の胸が動悸を打って、上下しているのが見えた。「今度は、背筋ね。うつ伏せになるわ。」みどりは身体を反転させて、結城が脚を押さえるのを待っている。彼はまた彼女の足首を両手で押さえねばならなかった。彼女の脚、尻、腰が彼の目に入る。彼はそれを見るともなく、彼女が始動し始めた後ろ反りのため、それにつられて足が上がるのをまた押さえていた。彼女はうつ伏せなので顔は見えない。彼女は彼に見られているのをたぶん意識しているだろう。彼女は自分の身体に自信があるから、むしろ見せたがっているのだろう。彼は長く伸びた形のいい彼女の脚、ふくよかな臀部、細くくびれた腰を意識して見た。彼は欲望を抑えねばならなかった。
「今度は、結城の番よ。あなたもやってみて。」とみどりは言って起き上がった。
「僕はいいよ。早く泳ぎたくなった。」と彼はしゃがみこんだまま言った。
「ダメよ。お腹に脂肪が付いていると言ったじゃないの。脂肪を取るには腹筋運動が一番よ。それに、タイムを出さないといけないから。さあさあ。」とみどりは言って、結城の手を引っ張った。彼は嫌々、床に寝そべった。全身を彼女の目にさらすことに抵抗があった。彼女の目が気になった。彼女は彼の足首を手で押さえて、彼の動きに合わせて数を数えた。彼は身体を起こす度に彼女の顔を見た。彼女は数を数えながら彼と目を合わせた。二十まで数えると今度はうつ伏せになるようにみどりは結城に命じた。彼は彼女の言うとおりに身体を反転させた。そしてまた背筋運動を二十まで行った。それが終わると彼は床に寝そべった。プールの周りに敷かれた滑り止めの麻状のマットが身体に擦れて痛かった。「さあ、おしまい。泳ぎましょうか?」とみどりが結城の身体を揺すって、言った。彼は立ち上がって、お腹の周りを見た。擦れた箇所が少し赤くなっていた。お腹の脂肪は変化がなかった。「まだ、効果は出ないわよ。何回も続けてやらないと。でも、急にやるのもよくないから、今日はこのくらいにして、だんだん回数を増やしていきましょう。」と言いながら彼の腕を取って、プールの渕まで彼と身体を寄せて歩き、一緒に水に飛び込んだ。水の中で彼女は彼に言った。


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