「調子はどう?仕事の注文はあるみたいで、私より仕事しているみたいね。なかなかやるわね。」と、夕子はいきなり切り出した。 「これも、朝霧さんのお陰ですよ。紹介していただいたところが順調に行っています。」 と、結城は謙遜して言った。 「それもあなたの実力だから。遠慮しないでやってちょうだい。」と夕子は一口水を飲んで言った。 「有難うございます。そう言っていただくと嬉しいです。でも、たまには一緒に訪問してください。朝霧さんの顔を見たがっている人がいますから。」 「関本部長かしら。そうね、また行きますからってそう言ってちょうだい。」 「ええ、言っておきます。行くのはいつでもいいです。話は違いますが、いつになったら夕子さんの家にいけるのでしょう。僕は待っていましたが、昨日の返事はショックでした。まるで僕の提案は無視されているようで。」 「提案?何だか仕事みたいね。」と夕子は笑った。そこに、今日の定食が運ばれてきたので、二人はお皿がテーブルに移される間待った。夕子はナイフとフォークを取り、食べ始めた。焼肉と魚のフライ、キャベツの千切りの付いたお皿に、ご飯と味噌汁だった。結城も食べ始めた。 「家に来てもらってもいいけど、恥ずかしいな。整頓がついていないので。人を呼んだことがないの、今まで。帰えるだけのねぐらって感じ。あまり整頓するとかえって落ち着かなくて。だから、来て欲しくないの。」と夕子はさりげなく言った。 「それでは、誰も部屋に入れたことはないのですか?」 「ええ、誰も。」 「そんなの信じられないな。」 「どういう意味?私がそんなにふしだらな女だと思っているの?」 「いえ、男性ではなくて、女性もという意味です。」 「ないわね。みどりも来たことがないわ。」 「そうですか・・・。」と、言って結城は黙ってしまった。 「どうしてそんなに家に来ることに固執するの?」と夕子は暫くして訊いた。 「いえ、固執などしていません。もういいです。」と言ったなり結城はまた黙ってしまった。 「おかしいわね。いつもの結城ではないな。」と夕子は言って、水を少し飲んだ。結城はランチを食べることに専念した。何を言ったらいいか考えている様子だった。 「夕子さんは結婚について考えたことがありますか?」結城は思い切って聞いた。夕子は顔を上げ、結城を見た。そして、暫く黙っていたが、「あるわよ。」とポツリと言った。 「あるんですか?」と結城は驚いたように言った。「それはいつのことですか?」結城は続けて聞いた。
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