「そんなにしないわよ。」と結城の方に振り向きながら、「最近は千葉ぐらいかな。」と言って、コーヒーメーカーに水をセットした。 「この前行ったところはよかったでしょ。のんびりできたわね。私は気に入っているので、また行きたいわ。今度は泳げないけれど。」 「海を見たり、温泉につかっているだけでもいいですね。」と言って、結城は顔を輝かせた。「この前はよく泳ぎましたね。」 「本当に。でも、不思議と疲れなかったわ。 時々、そこの室内プールでは泳いでいたけど、あんなに泳いだことはなかったの。結城さんがいたからね、きっと。」 「いや、僕も勝山さんがいなかったらあんなに泳いでいなったでしょう。」 ふたりは笑った。みどりがまたコーヒーをカップに注いだ。 「また、夏が来たら行きましょう。」と結城が言った。「そうね。でも来年は先の話なので、それまでは室内プールで泳ぎましょう。また来てくださる?」とみどりは首をやや傾げて、結城に訊いた。 「ええ来ますとも。」と結城はみどりの甘えた声にためらいがちに答えた。「じゃ、指切りしてください。」と結城の前に小指を差し出した。結城は更にためらったが、彼も小指を出して、みどりと指切りした。「嬉しい。結城さんとこれから何度も泳げるのね。」と言ってみどりはそのまま、結城の手を自分胸に持っていった。「ちょっと待ってください。大胆だな、みどりさんは。」と言って、結城は自分の手を引っ込めた。「あら、指切りぐらいで、そんなにむきにならなくてもいいのに。」とみどりは結城の顔をまじまじと見ている。「驚いたな、僕は。指切りだけじゃないじゃないですか。」と結城は言って、こちらもみどりの顔を見た。
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