「美味しいですね。タレがちょうどいい味で甘くもなく辛くもないです。マカロニサラダも美味しい。」と結城はみどりの顔を見ながら言った。彼女は嬉しそうに笑った。 「簡単なものでごめんなさい。あまり買い込みはしないので、冷蔵庫の中も少ししかないの。食べ過ぎに注意しているものだから。」「そうだよ、食べすぎはいけない。ただでさえ、カロリーオーバーしているのに、更に食べたらね、太っちゃう訳だ。うちの社員なんか腹が出ている者が多いでしょう。食べ過ぎだと思う。」と結城は言った。 「美味しいものが多いからね。つい食べちゃうのだと思う。それにストレスが大きいと余計に食べると聞いたけど。」 「そうかもしれない。うん、うん、僕にも経験ある。仕事をするほど、お腹が空いて、夜食べ過ぎちゃうんだ。僕も前の会社にいる頃肥ったことあります。」と当時を思い出して結城が言った。 「あら、ほんと、想像つかないけど。」とみどりはまた結城の胸を見て言った。 「運動はしないし、食べるものはしっかり食べていたので。おなかの周りに脂肪がついてしまって。痩せるのに大変だった。食事を減らすのが一代決心で。でも、会社を辞めたいと思い出してから、食べなくなったな。」 「あら、前の会社で。」とみどりは夕子から少しだけ聞いたことを、知らない振りして、返事をした。 「ええ。」結城は思い出したくないので、それだけ言った。みどりもそれ以上言わなかった。 「コーヒーいれるわね。」と言ってみどりは準備しておいたコーヒーメーカーのスイッチを入れた。やがて、ドリップの音と共にコーヒーのいい香りがしてきた。 みどりは食事のお皿を片付けて、民芸調のコーヒーカップをテーブルの上に二つ置いた。 赤めの土に赤や緑で彩色されていた。結城はそれを見て言った。 「いい趣味していますね。感じのいいカップです。きっとコーヒーも美味しいでしょう。」 「ええ、近くに陶芸のお店があって、そこで買ったの。何でも益子で修業した方がいて、そこの土で焼くらしいわ。外からお店の中を覗いていたら、感じのいい女性の方が中に入るように勧めて、つい入っちゃったら気に入ったのがあって買ってしまった。でもなかなか良いでしょう。」
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