「まだ上がって来そうにありませんね。」と向井が彼らを見ながら言う。太陽は少し西に傾き、お昼を過ぎたようだ。日差しは強く、パラソルの下でも、暑くなってきた。夕子は肩にかけたタオルを横に置き、長いすを影の方に少し動かした。向井も同じように長いすを動かした。二人はしばらく目を閉じて、長いすに寝そべっていた。 荒い息使いの男女が近付いてきた。「お腹空いた。」と言いながら、笑っている。夕子が目を開けると、結城とみどりが水を滴らせて、目の前にいる。相変わらず肉付のいいみどりの肢体が目に入り、続いて、横に結城の裸体があった。ふたりは長いすのタオルを取って、身体を拭き始めた。 「あら、やっと戻ったの。随分ながいこと泳いでいたのね。」と夕子はみどりに言った。 「ええ、結城さんが、二千メートル泳ごう、というものだから。わたしは、休憩しながらだけれど、結城さんは休憩なしで、泳いだみたい。」 とみどりはまだ息使いが荒い。 「ぼくも休憩しました。少しね。」と結城は呼吸の乱れはなくなってきて、平然と言った。「お待たせして申し訳ない。ところでお昼は済ませましたか?」 「まだよ。二人が戻るのを待っていたんだから。」と夕子は憤然として言った。 「あ、ごめんなさい。すぐに準備します。」と結城は言って、来る時駅前のコンビニで買ってきた、サンドイッチとおにぎりそれにペットボトルをクーラーから出して皆に配り始めた。お昼は簡単な食事でいいという、皆の意見で、浜辺で取ることになった。夕子はレストランでの食事を希望したが、少し遠いところにあった。それで、夕子も浜辺での食事に同意したのだった。 「あなた達まだ泳ぐつもり?」と夕子は結城とみどりに聞いた。 「ええ、僕はもう少し泳ごうかと思っています。」と結城はおにぎりを頬張りながら言った。みどりは「わたしも結城さんが泳ぐなら泳ぐわ。」と意欲を示した。 「わたしは暫く此処に居るけれど、時間を見てホテルに行くわ。チェックインして部屋にいるつもり。向井さんはどうする?」と夕子は向井に聞いた。 「そうですね、僕も部屋に行きます。」とおにぎりを食べながら向井は言った。 「遠慮しないでいいのよ。あなたも泳いできなさいよ。」と夕子は向井に言った。 「遠慮はしていません。泳ぐなら海よりプールの方がいいので、気が向いたらプールで泳ぎます。」
|
|