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作品名:当世女性気質 作者:石田実

第37回   37
「ええ、バスケットボール。」と向井は応えた。
「へー、道理で背が高いんだ。」
「いえ、それが低い方で、僕より大きなものが大勢いて、僕は補欠でした。」
「そんなに大きい人がいるの?」
「います。百八十五センチ以上がごろごろ。」
「へー、驚いた。そんなに?でも、大きいだけじゃだめなんでしょう。機敏でなければ。」
「そうですけど、結局身長がものを言いますね。」と言って向井は夕子の顔を見て微笑した。夕子は向井の胸や上腕の筋肉を見るともなく見ていた。社内では結城ほど話す機会があまり無かった。
「石田課長はゴルフをするけど、あなたはゴルフはどう?その身体ならボールがよく飛びそうね。」
「ゴルフは始めたばかりです。石田課長とは仕事の合間によくゴルフ談義をします。と言っても課長の薀蓄を聞くほうが多いですが。今度一緒にやろうと言われています。
「そう、楽しそうね。わたしはしないからよくわからないけれど、テレビは時々観たりするわね。」
「そうですか。やればいいと思いますけど。」
「石田課長にも誘われたことがあるわ。でもまだそこまでは・・・。女性でする人も他にいないし。」
「そうですね、仲間がいないとなかなかそこまでは・・。僕も単なるお付き合いですから。まだ全然うまくなっていません。時間がかかりそうです。石田課長に教えてもらわないといけない。」
「仕事もいつも一緒みたいね。面倒見がいいわね彼は。」
「ええ、とてもいい上司です。よく教えてくれます。それはそうと、朝霧さんも結城の面倒みているみたいで、結城が有難いと言っていました。本当に魅力的な人だとも。彼はあなたに魅かれているみたいですね。」と向井は思い切って言った。夕子は一瞬返事が出来なかった。向井はそれを見て続けて言った。
「どうですか、結城は?仕事は出来るみたいですね。人付き合いもいいし。よく、社員とも飲みに言ったりしているみたいです。僕は一度しか行っていませんが。」
「でも、お喋りね。」と夕子は心配そうにポツリと言った。
「え?いやそれ以外に朝霧さんのことは何も聞いていません。僕の方からどんな人か聞いただけですから。彼は何も言わなかったですよ。」
「そう。」と言いながら夕子は海の方を見た。まだ、彼らは泳いでいる。クロールなのだろう、腕と頭だけが見える。結城の後をみどりも同じ動きをしている。


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