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作品名:当世女性気質 作者:石田実

第27回   27
石田課長が皆を集めて、指示を出した。提案を増やすようにとのことだった。そのための勉強会を週二回行う、その予定表は追って連絡すると言った。
 夕子はクリエータと打ち合わせをして、飲料会社の提案書をまとめた。結城も中に入れてのうち合わせだったが、彼はラジオ広告と雑誌の型どおりの提案だった。キャッチコピーはクリエータが作った。電車の車内広告も入れて、三案を出すことになった。夕子は関本部長にアポの電話を入れた。幸い夕方には時間があるとのことだった。結城も同行するよう夕子は命じた。
 夕子は午後社内で課長に出す提案内容をまた練りだした。その間、豊製薬にも電話をして、提案を週末までに持っていくことを約束した。結城を入れて再度案を練り直して出すつもりだった。
 課長との打ち合わせは二時間ほどかかった。「今日はよく粘るね、朝霧さん。」と部長はたびたび言った。提案はほぼ受け入れてもらって、採用までにあと一歩だった。
「基本的にはこれで行きます。一週間以内に媒体に出せる状態でもってきてくれますか。そのとき社員数人に見せて、決定です。もう清涼飲料の広告も時期ではないが、予算もあるし、最後の勝負をしなければならないので、これで行きます。」と部長はほぼ納得した。夕子はお礼を言って、長い交渉を終わった。会社を出ると、受注の喜びを味わった。結城も喜んでくれた。ビールを奢ると言う。
夕暮れは疾うに闇に変わっていた。暑気は相変わらずだった。夕子はビールが飲みたくなった。ふたりは駅の近くの居酒屋に入った。もう、仕事を終わったサラリーマンでいっぱいだった。隅の席を詰めてもらい、座ることが出来た。ふたりは生ビールと枝豆を注文して乾杯した。「おめでとうございます。僕もうれしいですよ。」と結城が言った。「関本課長は本当にいい人ですね。」「いや、予算があったからだよ。無ければいくら言ってもだめだからね。」と夕子が言った。
「それもそうですが、朝霧さんもよく粘りましたね。さすが営業です。」と結城は褒めた。「そんな、人を褒めてもしょうがない。自分も頑張らないといけないと思わなくちゃ。」
「それが、朝霧さんだけは自分もうれしい気持ちになるんですよ。なぜか、それに女性としての魅力も感じます。」ビールを飲んで、酔い始めたのか、結城は思わず言った。


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