6 向井と結城の歓迎会の日が来た。夕方、近くの居酒屋に営業のスタッフと営業部長が集まった。希望者も他の部署から来ていた。まず部長の挨拶で始まり、乾杯と進んで、歓談となった。みどりも女性陣の中に這いって、盛んに御喋りをしている。時々、新入りの向井と結城に視線を送っている。しばらくすると涌くように賑やかになった。みんなてんでに話し、叫び、笑ったりしている。席が乱れて、グループごとに男女が混じって談笑するようになった。酒の勢いで、奇声を発するもものも出てきた。小野田は立ち上がって、踊りながら、「立花、元気ないぞ。仕事のことは忘れろよ。」と怒鳴っている。立花は何も言わず、小野田を見ている。「座れよ。気ぜわしい。」と市川が叫ぶ。「わかった。」と小野田はおとなしく腰を降ろす。横から向井がビールの瓶を差し出す。「申し訳ない。」と言って、小野田は注がれたビールを飲み干す。「向井さんも一杯。」と言いながら今度は小野田がビール瓶を差し出す。向井は自分のコップを取って、ビールを注いでもらう。「有難うございます。よろしくお願いします。」と言って向井もビール半分ほど飲んだ。「いや、馬鹿なやつばっかりだが、何でも言ってくれ。相談してくれ。」と小野田は先輩風を吹かす。「馬鹿じゃないよ。利口でもないが。あははははあー。」と市川が混ぜ返す。「みんないいやつだよ。俺以外は。」と小野田は言って、前に倒れそうになった。それを、向井と市川が支えて、彼の体を起こす。「もう、酔っているぞ。飲みすぎるなよ。小野田。」と市川が言う。「この間も飲み過ぎて寝てしまった。体が重いから、運び出すのに苦労するから。」その声が小野田に聞こえたらしく、「大丈夫まだ酔っていない。これからだよ。」と言いながらまた前に倒れる。それをまた市川が起こす。「今日は早いなあ。どうしたのだろう?折角の歓迎会だというのに。」と最後は起こすのをやめて、倒れたままにした。「うーん。」と小野田は唸っている。もう勝手にみんな話し合っている。小野田のことは気に留めなくなった。新入のふたりは席を廻って、サービスしている。女性陣のところに来て、みどりと話し始めた。結城とみどりが話し合っていた。
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