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作品名:当世女性気質 作者:石田実

第23回   23
「ところで、うちの社長の出版社立ち上げの話はその後何か聞きましたか?」と夕子は話題を変えて言った。
「いや、何も聞いていない。あれ以来横山さんとは会っていないので。忙しいからこられないのでしょう。」
「そうですか。社内の人に聞いても出版の話はないみたいで、噂も立っていません。きっと、社長の気まぐれで、本心ではないという人もいます。」
「はい、わかりました。寝ないで考えます。」と結城は意欲を示した。
「それでこそ、男だね。期待しているよ。会社に戻ったら資料を渡すから。」夕子が言い終わらないうちから、結城はもうなにやら考えている様子だった。結城の視線は窓の外をさまよっているようでもあった。
 ふたりが会社に戻ると、石田課長と向井はまだ戻っていなかった。他の営業マンも半数は外出中である。夕子は明日のアポイントを取るため、幾人かに電話をかけた。結城も明日は一人で会社廻りをするため、知り合いに電話をかけ始めた。夕子がトイレに立つと、みどりが廊下まで彼女を追いかけてきた。
「結城さんと一緒だったでしょう、どうだった?」とみどりが聞いた。
「どうだったって、普通の人よ。まだよくわからないけれど、意欲はあるわね。それに素直だし、やってくれると思う。」
「よかったわね。夕子と気が合いそうで。羨ましいわ。」
「何言っているのよ。競争相手よ。止めて頂戴。いちいち妄想するのは。今度歓迎会をするから、みどりも大いに仲良くなったらいいわ。」
「いつ歓迎会するの?」
「来週ね。水曜日がいいと思うけれど、みんなの都合がつけばいいけど。今日確認するので、決まったら言うわ。」
「私はオッケイよ。出席ね。」
と言ってみどりは席に戻った。


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