しばらくすると課長と係長が出てきた。 話は冗談から始まって、新社員の紹介に移った。結城は名刺をだしてふたりに挨拶した。 「よかったね。朝霧さんもいい部下ができて。ますます仕事に精を出せますね。」 と課長は冷やかす。 「とんでもないですよ。部下じゃないです。競争相手ですよ。うかうかしていると彼のほうが上に成るかも知れないですもの。」 「そんなに競争させるの。横山社長は?」 「させますよ。ひどいですよ。降格もさせると言っていますから。でもまだそんな人はいませんけれど。」 「へー、なかなかだとは聞いていましたけれど。」 「そうなのです。厳しいですね。激怒することがたびたびあります。」 「女子社員には怒らないでしょう?」 「女子社員には怒りませんけれど、厳しく注意はうけます。」 「へー、意外だな。やはり人は見た目じゃないのだ。いや、一度うちの社長を訪ねて見えたとき、お会いして挨拶しましたけれど、ソフトな印象だったので、そんなに厳しい人だとは思わなかった。」と課長は言った。 「営業畑の出身なので、人当りはいいですね。でも反面がらりと変りますから。人が違ったみたいに。」 「そうですか。気をつけないと。」 「大丈夫ですよ。お客さんにはそんな面は見せませんから。」と夕子は冗談と知りつつ言った。それから仕事の話に移り、検討してもらうことになり、飲料会社をあとにした。 それからまた地下鉄に乗り、夕子は結城と一緒に豊製薬に向かった。関本部長に彼を紹介するつもりだった。 「どうだった。課長の印象は?冗談が多いのよね。私が女だからかも知れない。本当はうちの社長に気がねしているのだと思う。私は話し相手だけなのかな?」と夕子は物足りなさを感じて、結城に聞いてみた。結城はまだよくわからないと応えた。
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