20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:当世女性気質 作者:石田実

第16回   16
と部長は言って、電話だと呼びに来た女子社員と部署に向った。そばで聴いていたみどりは直ぐに夕子に言った。
「あらあら二人はいるのね。楽しみね。」
「楽しみだけれど、苦労も多くなるわ。仕事が増えればいいけど。社長も無理するわ。」
「二人とも仕事ができるんでしょう。心配要らないって。もう任せておけばいいんだから。」
「そんなのやってみなければ分からないわ。」
二人の声が大きくなって他の社員が不審な目を向けた。電話の受話器を耳に当てながら、ふたりを見ている。夕子はどうして自分が興奮してきのか分からなかった。直ぐに席に戻って、パソコンに向った。メールが何本も這入っていて、返事をしなければならなかった。クレームの連絡も何本かあった。それらに返事を書いていると夕子は面倒くささを感じて、直接先方に出向いた方が簡単だと思った。彼女は外出を決め、石田課長に訳を言って、外に出た。陽は高く昇り、暑さが増してきた。上着は着られなかった。駅まで歩くと直ぐに汗が吹き出てきた。ハンカチで首や腕を拭かなければならなかった。電車の中は、エアコンが効いて涼しかった。恵比寿で降りて、某飲料会社へ向った。担当の課長を訪ねると、少し待たされた。その間、清涼飲料のセルフサービスで夕子は炭酸水を二杯飲んだ。暫くすると、課長ではなく、係長が出てきた。課長は手が放せなくて、代役で用件を承るとの事だった。用件があるのは客の方だった。しかし、その代役は何も聞いていなかった。夕子の方から切り出さなければならなかった。
「課長からメールで、今の広告では効果が出ないので、変更したいとのことです。早速伺いました。」
「そうですか。申し訳ございません。」
「いえ、謝るのはこちらですから。」と夕子は言った。
「直ぐに行くから相手をしていろと言われまして。」と係長は正直に言った。
「今年は雨が多いから影響があると思われます。八月に入ればよくなると思います。」
と夕子は場を繋いだ。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 7875