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作品名:当世女性気質 作者:石田実

第14回   14
「あなた彼に誘われたこと無いの。」と夕子は訊いた。
「無いわね。」とみどりは言った。「夕子はあるの。」と逆に聞き返した。
「私もないわ。お酒を飲みに行ったときもあるけど、それだけね。口では言うけどそれは冗談ね。多分本心じゃないと思うわ。彼は他に付き合っている人いると思う。」
「でもそんな噂聞いたこと無いわ。」
「彼と話しているとどうもいるみたい。まだ結婚までは決めていないみたいだけれど。」
「へー、それは初耳だわ。それじゃあ市川君は?」とみどりは小野田君の方は諦めたと言うような口ぶりだ。
「彼のことはよく知らないわ。みどりの方が知っているかと思っていた。」と、夕子はよく彼と話をしているみどりの姿を思い出して言った。
「彼とは冗談を言ったりするけどただそれだけ。何の発展もないわ。嫌いじゃないけれど好きになれそうもないわね。」
「そう。何だかいつも楽しそうに話をしているけれど。何でもないのだ。市川君もまだ結婚の気はなさそうね。一人の方が気楽なのかもしれない。」
「そおね。一人の方がいいって感じね。つまらないわ。」
「みどりの言うように本当に可能性のある男はいないわね。社内ではいないから、外で見つけるしかないわ。以前通っていた英会話の学校で知り合った人はどうなのその後。」
「ええ、オーストラリアに行ったきり返事ないわ。それっきり、どうなっているのかもわからない。」
「そお、残念ね。それであなた英会話も諦めたの。」
「ええ、それ程外国に行きたいとは思わなくなってしまって。まあ趣味だったのね。趣味ならテレビとかラジオの英会話番組で勉強できるし、わざわざ授業料払って教室に出なくてもいいし。のんびりやるわ。今度はフランス語もやろうと思って、テレビの番組ビデオに撮っているの。ところでうちの社長はフランス語話せるの。」
「さあ、知らないわ。話せないと思うけど。」
「でも、大学、フランス語科出身と聞いたわ。」
「バカね、あなた、フランス語科出たくらいでフランス語話せるなら、誰でも話せるわ。」
「そうなの、知らないけど。」
「あら大変もう1時よ。戻らなければ。」
と夕子は腕時計を見ながら言った。つい話しに夢中になってしまった。みどりと話しているといつもこうだわとみどりは思った。


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