「それじゃこうしよう。まず結城から採用し、入社意思と入社時期を確認、意思が希薄だったら、向井を採用する。結城の意思が固ければ、向井を断るしかないな。今のところ二人採用の余裕はないからな。どうだ、その方向で、部長。それで進めてくれ。」と専務は言って、腰を上げた。それで、採用打ち合わせは終りだった。 部署に戻るとみどりが話しかけてきた。採用者が決まったかどうか気になるらしい。内定したと言うと、どんな人か聞きたがった。みどりが好きになりそうな人だと夕子は答えた。みどりは笑顔をみせて喜んだ。楽しみにしていると言った。そして彼女は夕子を昼食に誘った。夕子は2,3件電話をし、みどりとよく行くレストランに向った。正午前で、まだ客は少なかった。 席に着き、注文をするとみどりは直ぐに夕子に訊いた。 「それでどんな人。」 「そうね、感じがいいし、素直ね。仕事も熱心だし、真面目なタイプ。残念だけど、そんなに遊ぶような人じゃないわ。」 「えー、またそんな人採ったの。詰まんない。さっきの話とちがうじゃない。」 「でも、真面目だけでもなさそう。第一ヘアスタイルが針鼠よ。格好は気にする方だわね。スーツも三つボタンで、いいもの着ているし、ワイシャツもカラーでネクタイも派手ね。若いのに感心するわね。小野田君なんかと違うわ。彼はバンカラタイプね。服装にはトンジャクしないし。髪もボサボサではないけれど、手入れしているとは思われないわね。みどりは小野田君どう思うの。」 「どう思って、別に。何にも無いわ。彼も仕事しか関心ないと思う。趣味の話も聞かないわね。遅くまで仕事しているし、アレじゃあ遊ぶ暇も無いわね。うちの会社はみんなそうみたい。」
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