【9】 あれから優子は砂浜を歩いている、屈みこんで砂を触ってみたり貝を拾ってみたりして一人でも楽しんでいる様だ。 ちゃんと僕の言いつけ通り海の中には入ろうとはぜず、多分この自然な環境について優子なりに多くを学習しているのだろう。 そろそろ優子にも独り発ちの時が来たのかと思うと、嬉しい反面少し寂しい気もした。 いくつか買い込んだパンもすべて食し、優子の安全を確認すると車の運転の疲れもあったので、僕は少しだけ横になる事にした。 僕のいる地点から凡そ50m位先で優子は屈みこんで遊んでいる。 波の音と海の風に包まれるこの感覚がとても心地良い。 少しだけ横になるつもりが、僕は知らずの間にそのまま眠りについてしまった。 それからどの位が経ったのだろう、まだ日も射し明るいので凡そ1時間位の経過と見て良いだろう。 僕は優子がまだ僕の側にいない事に気付き、僕は慌てて周囲を確認した。 すると50m付近に優子はいた、しかも他の人間も含めて。 優子の周りには男が2人、何だか優子に向かって話掛けている。 その後男2人は驚いた様子を見せたが、その内の一人が優子に駆け寄りまた何かを話している。 僕はすぐにでも優子の側へ行ってあげたかったが、今後の事を踏まえ一人でも人と接して行ける様にと、僕は暫く優子の様子を見る事にした。 優子はと言うと砂地に座ったまま男達を見て呆然としている。 もう一人の男も優子の側へ駆け寄り、何やら優子に話掛けている様だ。 男達のあのだらしなく声を掛ける振る舞いには見覚えがあった、それは以前ここに来た時の自分達と重なるからである。 どうやら、完全にナンパ目的らしい・・・。 流石に僕も嫉妬心から急いで優子のもとへ向かった。 案の定男達は優子の体を触りだした、そしてそれに嫌がる優子がそこにあった。 その嫌がる仕草がとても人間っぽく、男達は驚いている。 優子は慌ててその場を逃げ出した。 そして僕は叫んだ。 「優子〜!!」 優子は無我夢中で海の方へ向かって行った、そして転んだ・・・。 更に転んだ優子に追い討ちの波が来た、優子の全身は海水と泥でズブ濡れになってしまった。 「優子〜!大丈夫か〜!!・・・」 僕は優子のもとへと駆けつけ、すぐに抱き起こし優子を連れその場を離れた。 さっきまで優子に絡んでいた男連中は無責任にも何処かへ逃げてしまった様だ。 優子はさっきの出来事が余程恐かったのか、僕の腕にしがみ付いて離れない。 「優子もう大丈夫だよ。」 恐がる優子に優しく声を掛けてあげると、優子は少し安心したのか僕の顔を覗きこんでこう応えた。 「トシオ・・・ゴメンナサイ・・・」 こんな優子を見るのは初めてだった、今までどんな時にでも悲しむ仕草など一切僕に見せた事の無い優子が今日は僕に抱きつき涙は出ないが悲しんでいる様に見えた。 「優子、体の調子はどうだい?」 海水で濡れてしまった体が気になり僕は声を掛けた。 「ウン ダイジョウブミタイ デモ・・・ トシオニ カッテモラッタ フク ヨゴレチャッタ・・・」 優子は自分の体の事より、僕の事を気遣ってくれている様であった。 「それなら大丈夫さ、車の中に戻ればさっきまで着ていたのがあるだろう?それをとりあえず着ればいいさ♪」 優子はその言葉に素直に頷き、元気に「ウン♪」と応えた。 優子の無事が確認出来ると、僕達は一度車へと戻る事にした。 続く・・・
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