【7】 優子を連れ車で走り始めてから2時間が過ぎた、優子は黙って車の窓から外の景色を見ている。 優子は外の景色をテレビでしか見た事が無い、多分すべてが新鮮なのだろう。 ここで優子が僕に話しかけて来た。 「ネエ トシオ ・・・ ソトッテ ドコマデ ツヅイテイルノ カシラ?」 この言葉はどう捉えれば良いのだろうか? 長時間のドライブに流石の優子でもそろそろ飽きてきたのか?もしくはそのままを取って言葉を返したら良いのか? そうこう考えている内に間髪入れず優子の方から言葉をかけてきた。 「テレビデ ミルノトハ チガウ セカイ・・・・ バメンガ キリカワラナイ ズットズット ツヅイテイク・・・・」 「!?・・・・」 そうなのだ、優子は純粋なのだ。 僕は要らぬ事まで考えてしまうが、彼女が発するその言葉に裏など存在せず、思っている事をそのまま話しているに過ぎないのである。 「それはそうさ、こっちが本当の世界なんだからね。」 僕は優子に優しく微笑みながら言葉を返した。 優子はまだ不思議そうな顔で僕の方を見つめていたが、その後はまた窓越に見える景色を楽しんでいる様であった。 後1時間程で海へ着く予定である、僕は優子に退屈させない為に車のラジオを点けた。 すると早速スピーカーから流れでた曲は【スピッツ】の【青い車】。 彼女は初めてのラジオの音に少し驚いた様子を見せたが、その後はその曲で気分が乗ってきたのか曲のテンポに合わせて頭を動かしていた。
「君の青い車で海へ行こう〜〜♪ おいてきた何かを見に行こう〜〜♪」
僕はこの曲は初めて聞くが、まるで僕達の事を祝福して歌っているかの様に思えた。 曲が終わり頃を迎えると前方にドライブ インが見えてきたので、僕達は気分転換にここへ立ち寄る事にした。 比較的に大きなドライブ インであり、僕は優子が迷子にならない様に手を繋いで歩いた。 優子にしてみれば僕以外との人間との関わりも含め、何もかもが初めての体験である。 優子自身もその緊張からか、繋いだ手に力が入る。 「大丈夫だよ、心配しないで優子♪」 僕は笑顔で優子の耳元に囁いた。 優子は僕の落ち着いた表情を見ると安心したのか、肩の力も抜け普段通りの優子に戻った。 店内に入ると客数はボチボチといったところではあったが、それなりに繁盛している様だった。 やはり正直店員やお客の目は気にはなる、しかしそれは恥じらいからでは無く優子に何らかな被害が及ばないかを心配しての事である。 優子には人間に見える様に服装でカバーしているので、それなりな格好にはなっているが、メタリックな顔だけは隠しきれない。 しかし、ここでうろたえていたのであってはこれから先に優子と付き合って行くのにも支障がある。 意を決しここは堂々とし、もし誰かに何らかの事を聞かれたらその事実を隠すのでは無くハッキリと「この子は人間であり、僕の妻です!」と言ってやろうと思っている。 案の定、店員やお客の中には物珍しそうにチラホラとこっちを見ている様にも思えたが、特別何も言っては来ない。 それが日本人の性質何だろうか? 僕達はそのまま何も気にせず堂々と店内を見て回った。 店に置いてある物の殆どはお土産品であったが、奥へ進むと洋服なんかも取り揃えてあった。 そこで僕は優子に服を試着させてみる事にした。 僕は優子にどんな服が似合うのかを考えてみたが、元々センスのない僕が決めるのもどうかと思い、優子自身に決めさせてみる事にした。 「優子、何でも好きな服をここで選んで良いからね。」 僕の言葉に頷いて、優子は真剣な表情で自分に合いそうな服を選び出した。 「・・・・・コレカナ〜?・・・・ ソレト コレ・・・アト コレモ・・・」 優子の選んだ物はどれもマネキンが着ていた物だった。 その中でサイズの合っている物を僕は選び出し、試着室で優子に着せて見る事にした。 上から【帽子・スカーフ・ブラジャー・長袖シャツ・カーディガン・手袋・パンツ・ジーパン・ベルト・靴下・靴】どれも女性らしいデザインが施され、さっきまでのボーイッシュな姿とは一転して、とても可愛く思えた。 「ドウ? トシオ・・・・・ニアウ?」 優子は恥ずかしそうな素振りを見せて僕にこう訊ねた。 「・・・・・最高に可愛いよ、優子!」 今回のこの女性らしい優子の姿には心から可愛いと思えた。 「ウン♪」 しばらく自分の姿を鏡に映し、優子自身もとても喜んでいる様であった。 ここまで優子の喜ぶ姿を見てしまっては流石にこれらの物をプレゼントしない訳にはいかず、僕はこれらの物をすべて買ってあげる事にした。 すべての値札を取り会計を済ませると出費は予想以上のものであったが、喜ぶ優子の姿を見るとそんな事はどうでも良くなっていた。 それから僕達はまた車へと乗り込んだ、案の定僕達は何事も無くお店を出る事が出来た。 早速車を走らせると、さっきと同じ様に窓の外を見つめる可愛らしい優子・・・。 僕はさっきそこで買ったホット缶コーヒーを口に含むと、今のこの幸せな思いと共にコーヒーを一気に飲み干した。 続く・・・
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