【41】 彼女からの話によると僕は彼女を守る為に怪我をし、その後遺症の為に大部分の記憶を失ってしまったとの事であった。 そして彼女とは同棲する程の仲だと言う、外見からすると僕より大分歳が下の様に思われるが。 「俊夫は何も分からない私に何でも教えてくれた、だから今度は私が俊夫に報いる番。」 そう言うと彼女は親身になって色々と教えてくれた。 僕の名前は『鈴木 俊夫』彼女とは約半年の付き合いだそうだ、僕は彼女の事を普段は『優子』と呼んでいたらしい。 そして彼女は数々の僕との想いでを語ってくれた、楽しそうに話すところを見ると僕はどうやら彼女の期待には応えていた様だ。 彼女は所々に「あの時の事は覚えている?」と聞いてくる、しかし僕は正直全くと言っていい程に覚えていない。 そんな僕の表情を見た彼女は寂しそうに目には涙を浮かべていた。 僕は何とか思い出そうとするが、その度に頭痛やめまいに襲われた。 聞けば僕はこの病院でかれこれもう一ヶ月近くも入院をしているらしい、彼女は毎日泊り込みでこんな僕につきっきりで看病をしているとの事であった。 この部屋は個室で僕が休んでいる所以外のベットは無く、唯一休む所があると言えば今彼女が座っている椅子一つである。 (こんな所で彼女はずっと僕の看病をしてくれていたと言うのか?) そんな彼女の慈愛に満ちた気持ちに、応えられない僕の胸は苦しくなった。 僕は彼女の為に自分のベットを空けようと体を動かそうとするも、自分の体だと言うのにも拘らず中々思う様には体が動かない。 どうにかベットの柵に掴まると、体を端座位の状態にまで起こす事が出来た。 鼻には何かチューブの様な物が入っている、それに違和感を感じた僕はそれを引き抜いた。 「俊夫!?」 彼女はそれを心配そうに見守っていた。 僕は更に今度は立ち上がろうと試みるが、手足が痺れ中々思う様に体が動かない。 「まだ動いちゃ駄目!」 彼女は必死に止めるが、僕は彼女の気持ちに何としても応えたかった。 「優子さん、少し僕の体を支えてはもらえないですか?」 初め彼女は危険だからとそれを強く拒んだが、僕の必死さが彼女に伝わってか「少しなら」と協力をしてくれた。 試行錯誤の末、両足を手前に引き彼女に両手を引っ張ってもらう事によりどうにか立ち上がる事が出来た。 しかし僕の体はフラついてしまい、そのまま彼女に覆い被さる様に抱きついてしまった。 「すいません」 覆い被さりながら僕は彼女に謝った、でも抱き締めたこの感触が何故か懐かしい感じがした。 「ううん、いいの」 僕はどうにかベットへと戻ると、彼女とは暫く沈黙が続いた。 そこに巡回の看護婦さんがやって来た。 「鈴木さん目が覚めてたの!?、あら?鼻のカテーテルを勝手に抜いちゃ駄目じゃないの!」 その後も僕は看護婦さんに色々とこっ酷く注意をされた、怒られついでに僕はこの看護婦さんにいつ退院が出来るのかを聞いてみる事にした。 すると僕の意識が戻ったので今度はリハビリ施設にて訓練を受けてもらうとの事であった。 僕は優子と言う名の彼女の期待に応える為にも、早く元通りに復帰したいと心から願っていた。 続く
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