【38】 相手は少年達と言えど、体格的に見れば充分大人である。 しかもその相手は二人、その内の一人は目が殺気立ちその手にはジャックナイフを持っている。 ここは戦うには分が悪い、だからと言ってこのまま優子をこの場に置いて僕一人逃げる訳にもいかない。 僕は意を決し戦う事にした。 「俊夫〜っ、逃げて〜!!」 優子は泣き叫びながら僕に退く様呼びかける。 「優子ごめんな、悲しい思いさせて」 悲しむ優子にこれ以上苦労はさせられないと、僕は心から想いを込めて優子に詫びた。 「何だよあんたみたいなオジンがこの女のツレかよ、笑わせるんじゃね〜よ!」 「援交でもしてんじゃね〜のコイツ!、ハッハッハ♪」 二人の男は完全にナメてかかっている、ある意味チャンスだ。 僕はここで更に相手に油断させる様に、意外な行動に出る作戦を試みた。 「お前達いくら欲しいんだ、小切手っで良ければお前達の望むままの金額をやるぞ」 「!?」 あまり使いたくは無い手だが、状況が状況なだけにここは大人の権力を見せ付ける事にして相手を油断させてから反撃する作戦に出た。 昔から漫画やドラマ等で悪党が助かりたいが為によく用いた手法である、相手はまだ人生経験の浅い子供だこれで上手く騙せると良いのだが。 「援交出来る位だからこいつ結構金持ってんじゃね?」 「マジ!?なら俺達にその金よこせよ!」 (喰らい付いた!!) 正直僕は小切手なんて洒落た物など一度も持った例も無く、財布の中身は一万円にも満たないお金しか入ってない。 バレテしまうのは時間の問題である。 男達は僕を警戒してか持っているナイフをまだ放そうとはしない、どうにかその武器を取り上げない事には。 そこで僕はポケットから財布を取り出す素振りを見せて車のキーを手に持ち、キーの先端が鍵を握る拳の間から突き出す様に構えた。 ナイフを持っている側の男は距離にして僕から1メートル位前方の立位置、そして残るもう一人の男はそのすぐ後ろに立っている。 そこで僕はナイフを持っている側の男にまずはターゲットを絞り、攻撃を仕掛ける事にした。 興味津々に更に油断して近ずく彼らに僕はポケットから鍵を忍ばせた拳をすかさず引き出し、ナイフを持っている側の男の肩を目掛けてその鍵を突き刺した。 「ぐわぁ〜!!」 先手必勝、完全に油断していた彼に大きな痛手を負わせるとともに、彼の右腕からナイフが落ちた。 僕はすかさず落ちたナイフを蹴り飛ばし、そのナイフは暗闇の中へと消えて行った。 その後二人目の男が僕に目掛けて襲い掛かって来た、背中に一発蹴りが入ったものの大した事は無い。 僕はそのまま地面に倒れる素振りを見せつつ落ちている石を拾うと、すかさずその石を男に向かって投げつけた。 投げた石は当たりはしなかったものの男を警戒させる事が出来た、そこで僕はその隙にすかさず自分の腰ベルトを外しムチ代わりにしたベルトの先端金具部分を相手の胸へと強く打ちつけた。 「ぎゃ!!」 二人目の男の胸に強烈な一撃がヒットした。 二人の男達は痛みで今ももがいている、今の内に優子を救出しないと。 「優子!、車に乗れ!!」 「!?、うん!」 優子は二台のバイクを力いっぱい押し倒すと、すかさず僕の車の中へと逃げ込んだ。 僕は優子に気をとられていると、初めに倒した男が僕の背後から石を持って殴りかかって来た。 その石で僕は頭を強打され一瞬意識を失いかけたが、優子を守る為にも僕はここで倒れる訳にはいかなかった。 倒れそうになる体で僕は相手に向かって突進し、そのまま相手を地面へと押し倒した。 男は倒れる際にアスファルトに頭を強く打ち付けた様で、そのまま気絶してしまった。 その隙を見て僕はふらつきながらも、車の中へと逃げ込み優子と一緒にその場を去った。 続く
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