【36】 今までに僕はこんなにも女性から愛された事なんてあっただろうか? 正直何のとりえも無い僕に何故美野月さんは? そこで僕は美野月さんから何故僕の事を好きになったのかを聞いてみる事にした。 「私が幼い頃に両親は父親の浮気が発覚した事で離婚し、私と兄は母の所に引き取られました。 女手一つで私達を養う母に迷惑はかけられないと、私はずっと学校で虐められている事実を隠していました。 そんな私をいつも優しく慰めてくれたのが兄でした。 兄は私より五つ上で全く強くはありませんが、誰よりも優しかったんです。 母ばかりに苦労は掛けられないと兄は高校へは行かず就職を選びました。 それから間もなくして、兄は仕事の最中に同乗者の車での運転ミスにより亡くなりました。 唯一の理解者である兄を亡くした事で、私は絶望の淵に立たされました。 自殺も考えましたが母一人苦労をさせる訳にはいかず、私はそこで思い留まり強く生きていく決心をしました。 でもいくら強そうな素振りを見せても、決して強くはなれないんです。 今いる会社も同じで私は次第に孤立していくだけでした、しかしそんな私を唯一理解してくれたのが俊夫さんなんです。 俊夫さんは忙しい身でありながら、私の悩みをいつも真剣に聞いて下さいました。 多分私はあなたの事を今は亡き兄の面影と照らし合わせてしまったのだと思います。」 そう思いを語る彼女に同情はしたが、僕の優子への想いは変わらない。 僕は自分の思いを彼女に告げた。 「正直君からの告白を僕はとても嬉しく思う、恥ずかしいけど僕は生涯に一度だって女性からの告白何て受けた事が無いんだ。 だから正直僕は今どう応えて良いのかは解らない、だけどこれだけは言わせて欲しい。」 『僕には今愛している人がいて、その対象が人間の君ではなくアンドロイドの優子だと言う事を』 僕の信念を彼女に告げるが、彼女はまだ僕を引き止める。 今後の結婚はどうするのか? 子供はどうするのか? 将来はどうするのか? 優子と一緒とでは絶対に幸せにはなれないと言い張る彼女。 僕はそんな彼女にこう言葉を返した。 「幸せになれるかどうかは解らない、しかしこの世に優子がいる限り僕は優子を愛し続けるだろう。」 僕は美野月さんの彼氏にはなれないが、今までの様に君の兄の様な存在にはなれるとだけ話した。 「引き止めてしまってスイマセンでした、優子さんの元に行ってあげて下さい」 ようやく美野月さんからの理解を得られ、僕は急いで優子の元に駆けつける事にした。 「お兄ちゃ〜ん、若菜ワガママ言ってごめんなさい!」 車に乗り込む僕に向かって、美野月さんはまるで本当の妹の様な振る舞いで大きく手を振って僕を見送った。 (妹か〜) 優子の事で我に返ると僕は車のアクセルを深く踏み込んだ。 続く
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