【31】 「鈴木くん、この書類いつもの様に宜しく頼むね!」 最近の職場での上司はどうにも人使いが荒く、重要な仕事は度々僕の方に回してよこすものだから中々定時には上がれずに困っている。 家には可愛い優子が僕の帰りを待っていてくれていると言うのに・・。 まあその辺は僕の仕事の能力を上司も認めてくれていると言う事で、特別悪い気はしていない。 優子が家に来てくれてからと言うもの仕事の方は順調で、自分でも驚く程の成果を出し職場の者を驚かせた。 以前の僕には全く見向きもしなかった連中まで僕を頼る様になってきた。 一ヶ月程前の話である、僕がいつもの様に書類作成が間に合わずに会社で居残りをしていた時の事だが、ある女性社員に 「ちょっと相談に乗って貰いたい事が・・。」と頼まれた。 その女性社員の名前は『美野月 若菜』この職場に入ってから1年程が経つ。 歳はまだ20代前半と若く、長身で綺麗な顔立ちをしている。 事の内容はこの職場内での人間関係が原因で、仕事を辞めたいと言うものであった。 そこで僕は彼女の悩みを理解した上で、困った事があれば僕がいつでも相談に乗ってあげると言う事を条件に、彼女の退職を思い留めさせた。 それからと言うもの彼女は、仕事の帰りには必ず僕の所に来て一日の結果報告をする様になった。 ここの職場にも人事部は設けているのだが、何故部外者の僕にわざわざ訪ねに来たのか?と聞いたところ・・ 「人事部の人よりも話易そうだったから♪」との事であった。 仕事は出来るが奥手の僕には彼女の話しを聞いてあげる事位しか出来なかったが、彼女はそれでも仕事の終わりには僕に報告をし続けた。 この会社は基本的に残業は無い為、上司に頼まれた僕と上司以外は職場に残っておらずその上司も他社との契約の為に会社を留守にし、そのまま自宅へと直帰する事がしばしば続いていた。 その為に会社の定時を過ぎると、その場は彼女と僕の二人きりになってしまっていた。 今日もいつもの様に書類作成に追われていると彼女は 「毎日遅くまで残業お疲れ様です♪」と笑顔でコーヒーを入れてくれた。 僕はいつも家で遅くまで待たせている優子に、(今日こそ早く帰ってあげよう)との思いで早急に仕事を片付けようと頑張っていると、その僕の熱心さが彼女に伝わってか今日は報告せずにそのまま帰ろうとしていた。 しかし僕は彼女の悩みを聞く事も仕事の内と決めていたので、僕は彼女を引きとめた。 しかし彼女の様子がおかしい、僕は仕事しながら彼女の話に耳を傾けていると彼女は自分の思いを語り出した。 今では人間関係の方は大分解決してきたとの事だが、どうやら問題は別のところにあるとの事。 「どんな悩みだい?」 僕はいつもの様に訊ねた。 彼女は顔を赤らめた後に答えた、どうやら恋煩いの様である。 「ふ〜ん・・それで好きな人にはもうその思いを告げたのかい?」 すると彼女は少しためらってから、はっきりと答えた。 「鈴木 俊夫さんと言う人を好きになりました!」 それだけを言い残し、美野月さんは慌てて帰って行ってしまった。 (僕には優子が・・・・・・・・・・・・・・・。) 「あら俊夫、お帰りなさい!今日も遅くまでお仕事ご苦労様♪」 今日僕は優子の目をまともに直視出来なかった。 続く・・・
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