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作品名:鉄の妻 作者:池野 蛙

第29回   第二十九話
【29】
どうにかお札を一枚ゲットした僕達は、続けて二枚目のお札も手に入れる為に先に進んだ。
辺りには今にも何かが出てきそうな雰囲気を漂わせている、優子は相変わらず僕にベッタリとしがみついて離れない。
僕達はあれからかなり歩いた筈なんだが、一向にゴールにはたどり着かない・・。
辺りにはいよいよ人気も無くなり、僕と優子の二人だけになってしまった。
「ねえ俊夫、なんか二人だけになっちゃったね・・。」
優子は今にも泣き出しそうになりながらも僕に訊ねた。
確かに何かおかしい、何故か同じ所を何度もグルグル回っている様な気がする・・・。
それに加え今まで僕達を脅かす為に用意されていた、オドロオドロしい仕掛けや脅かす人達まで一切出て来なくなった。
僕達が一枚目のお札を手に入れその後逃げた時に、途中コースを外れてしまったのではないかと僕は考えた。
そこで僕達は一度来た道を辿って、もと来た道に戻る事にした。
しかし辺りは暗くお墓が永遠と続いている、やはり何かがおかしい・・。
このすぐ隣には今まで参加していた祭りの会場があるため、賑やかな音楽等が少しは聞こえていたのだがそれも無くなっている。
「俊夫・・、さっきから何か気分がおかしいの・・・。」
いくら歩いても出口が見えない中、優子が気分の不調を訴えた。
優子をここへ連れて来た責任もあり、(どうにか元の場所に戻らないと)と言う思いからいつの間にか僕は勇気が湧いてきた。
歩けど歩けどお墓が続く中、優子は更に気分が悪くなったのか顔色が優れない様子。
僕は優子を励ましつつ、出口へ向かう事を最優先とし歩き続けた。
「きゃーーー!!」
その時である優子は悲鳴をあげた、何かにつまづいたのか転びそうになるのを僕は優子の体を支えそれを防いだ。
優子は倒れはしなかったものの何かに足をとられ先に進めないでいる、優子がしきりに何かを訴えているがあまりに小声で聞きとれない。
そこで僕は優子の足下を確認するとありえないものが優子の足を掴んでいた、なんと地面から生えた青白い手が優子の足を掴んでいた。
流石に僕はこれには恐怖から腰が抜けてしまい、その場でヘタってしまった。
ここでしきりに訴える優子の声がようやく聞き取れた。
「俊夫・・・助けて・・・・・・。」
しきりに僕に助けを求める優子の姿を見て、ここで僕は男になった。
勇気を奮い立ち上がると僕が見間違えていたのか優子の足を掴んでいたその手はいつの間にか無くなっており、意識が薄れ動けなくなった優子を僕はおんぶするとそのまま出口へと向かってまた歩き出した。
暫く歩いた所で白髪のお婆さんの姿が見えた、ようやく人に会えた事で僕は少し安心した。
そこで僕はそのお婆さんに町に戻る方法を聞いてみようとしたが、何かそのお婆さんの様子がおかしい・・。
しきりに何かを探している様であった、そこで僕は一緒にお婆さんの探している物を探してあげる事にした。
お婆さんが言うには地蔵さんの首が無くなったとの事であった、そこで僕が辺りを見回すとすぐに草の中からその地蔵の首が見つかった。
それから僕は地蔵の体から離れてしまったその首を元通りに乗せてあげた。
「ありがとよ・・ワシは目が見えんが、おまえんとこにも可愛らしい地蔵がおるのがワシにはよう見える・・。」
そう言うとお婆さんは黙って指をさした、まるで僕達の進むべき道を教えるかのように・・。
「俊夫?・・。」
ここで優子は意識を取り戻した、僕は優子をおぶったまま「心配はいらないよ♪」と笑顔で返した。
お婆さんに一言礼を言おうと僕は振り返るも、いつの間にかお婆さんはその場にいなくなっていた。
とりあえず僕は優子を背負いながら、お婆さんが指さした方角に向かって進む事にした。
「俊夫の背中、温かいね・・・。」
さっきまで恐がっていた表情の優子が僕の背中で落ち着いている様であった。
それからどれ位歩いたのか、ようやく『出口』の看板が見えた。
僕達はどうにか戻って来れた事に心から喜んだ。
すると初めに僕達に怪談話を聞かせた人がゴールで待っていてくれた。
「どうやらあなた方は一度この世とは違う世界に足を踏み入れてしまった様ですね。」
脅かし文句なのか、まるで幽界でもあるかの様な口ぶりである。
優子も元通り元気になった様であった。
「俊夫・・ちょっとカッコ良かったぞ?」
優子はもう元気になった筈なんだが僕の背中からは下り様とはせず、更に「ギュー」と後ろから強く抱き締めた。
お札は三枚揃わなかったものの、僕はそれ以上の物を手に入れた気がした。
丁度その頃祭りの会場の空には、大きな花火が打ち上げられていた。
花火の明るみに照らされた優子の横顔に、僕は花火以上に夢中になっていた。
続く・・・


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