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作品名:鉄の妻 作者:池野 蛙

第28回   第二十八話
【28】
祭りの会場を少し離れた所で何かイベントが行われていた、どうやら夏にはお決まりの肝試し大会の様だ。
「ねえ俊夫〜、ここはなあに〜?」
優子も興味津々の様子。
ここは一つ恐がる優子に男らしいとこを見せる絶好のチャンスだと僕はさっきの不様な失態の汚名返上の為、優子の手を引きこれに参加した。
ルールは初めに怪しそうな語り部さんからの怪談話を聞き、その後にお墓巡りをしてその地点地点にある3枚のお札を無事に持って帰ればクリアと言うゲームである。
そして無事3枚のお札を持って帰った人には、何か景品が貰えるらしい。
もう早速始まっていたが、出口から出てくる人達は男性も女性も「キャーキャー」「ワーワー」と逃げ帰って来るだけで全部のお札集めには成功していない様であった。
正直僕自身もかなりの臆病であるが優子のいる手前、ここでカッコ悪いところは見せられない・・。
僕達が語り部さんの前に立つと早速怪談話が始まった。
「生と死の間の世界へようこそおいで下さいました、ここは完全に死にきれてはおらん者達の怨念のこもる場所です・・。
一度ここへ足を踏み入れますと、そのまま魂を持って行かれ現世には帰れなくなる事もシバシバございますのでくれぐれもご用心を・・・。」
語り部さんの話にはリアリティーがあり、これからお墓巡りをする者にこれでもかと言う程に恐怖心を植えつけていた。
僕もその内の一人である・・。
優子はと言えば語り部さんから聞いた話で、お化けの存在をすっかり真に受けてしまい始まる前から泣きそうな顔をしている。
(良し!優子も怖がっている、チャンスだ!!)
僕達は早速お墓巡りを開始した。
「俊夫ぉ〜・・さっきの人が言った事、本当の話かなぁ〜?」
僕は優子にここは少し意地悪をして、より恐がらせようと「本当かもよ♪」と答えた。
それを聞くと優子は僕の側に身を寄せ、両手で僕の腕を強く掴んだ。
事実僕自身もかなり怖いが、そんな優子の様子を見ると不思議と強くなれる気がした。
お墓巡りを開始してすぐに人魂が現れた。
「ひぃっ!!」
優子は目に涙を浮かべ僕に抱きついて来た、僕自身もかなり驚いたが良く見ると人魂を吊るす糸が見えていた。
「優子、僕がついているから大丈夫だよ♪」
「うん・・」
見事に僕の筋書き通りの展開となった、後は僕自身が弱腰にならないでお札を無事に持って帰れば済む事・・。
どれも全部仕掛けがあっての事・・、僕は自分にそう言い聞かせた。
優子にしがみつかれながら先に進むと棚の上に一枚目のお札が用意されていた、僕は早速それに手を伸ばすとお墓の陰からお化けが現れた。
「んぎゃぴ〜〜!!!!」
優子はもう言葉にならない声で逃げ惑う中、僕自身もそれにつられて一緒に逃げてしまった。
逃げはしたものの手の中にはお札が・・セーフ・・・。
「俊夫〜・・ここ怖いよ〜・・でも俊夫はお札持ってるから凄いね・・。」
優子はベソをかいている、今回は運の良さに救われたが次はどうだろうか・・・。
(今にも逃げ出したい)30歳にもなってちょっとチビってしまった俊夫であった。
続く・・・


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