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作品名:鉄の妻 作者:池野 蛙

第27回   第二十七話
【27】
「このブタさんにも名前付けてあげなくちゃ♪」
優子はさっき射的でお情けで手に入れたブタのぬいぐるみの名前を真剣な表情で考えているようであった。
「う〜ん、ブタさんだから〜・・・ブーたん!この子今日からブーたんね!
私は優子、ヨロシクね ブーたん?」
優子はブタのぬいぐるみに即決で名前をつけると、大切そうにそのブーたんを抱きかかえた。
(ブーたんめ!)
そんなぬいぐるみにまで嫉妬してしまう僕っていったい・・・。
それから僕達は大きな広場の方へと足を運ばすと舞台のステージが設置されており、そこではお祭りの歌や踊りが繰り広げられていた。
「うわ〜楽しそう〜!、なんかみんなで踊っているよ〜♪」
優子はステージの一番よく見える位置にまで駆け寄ると、夢中になって祭りの歌や踊りを楽しんでいる様であった。
「さあ皆さんも宜しかったら、ステージの上でご一緒に踊りませんか〜?」
司会の方が一般の人も踊れる様にと催促すると、優子は目を輝かせた。
「優子も上で踊りたい!・・良いかな俊夫ぉ〜?」
僕はそんな好奇心旺盛な優子にここは思いっきり楽しませてあげようと僕もここは恥じらいを捨て、優子と一緒にステージの上で踊る事にした。
正直人前で何かが出来る程の度胸など以前の僕には全く無かったのに、優子の前だと不思議と強くなれる様な気がした。
司会の人の踊り方を僕達は真似する様なかたちで、早速曲に合わせて僕達は踊る事となった。
これが意外にも難しく僕は出だしの足を間違えてしまった、それに比べて優子はみんなと交じってとても楽しそうに上手く踊っていた。
ステージの上で踊っている人達はプロの人も含めてみんな年配の人達ばかりな為、若い優子の存在がとても可愛く目立って見えた。
それに釣られてか若い男連中までもが一斉にステージの上へと身を乗り出し、優子の近くで一緒に踊りだした。
こうなって来ると踊りも勢いを増し気付いた頃には人が人を呼び、多くの若い男女がステージを囲みみんなで踊る様になっていた。
周りの若い連中は独自のカッコ良い踊りまでもを披露する中、僕は相変わらずに忠実に踊っていた。
優子はと言えば周りのカッコ良い踊り方に影響されてか、もうすでに可愛らしい踊り方にすりかわっている・・。
僕も優子の前でカッコ良いところを見せない訳にはいかない・・、そこで僕は学生の頃には出来たバック転に再び挑戦してみる事にした。
周りで踊っている者の中にはすでにストリートダンスまでもを取り入れている者がいる、優子はその姿に夢中になっている様であった。
踊りも終盤に差し掛かってきた、(やるなら今しかない!)
僕は優子の近くへと移動するとバック転を試みて意を決し、大きく後ろ宙返りのジャンプに挑戦した。
「バタン!!・・・」
僕は腹ばいのまま体を強く打ちつけてしまった。
あまりの苦しさに暫く呼吸すら出来なかった僕に、優子は慌てて僕の下へと駆け寄って来た。
「俊夫、大丈夫!!?」
あまりにカッコ悪く不様な僕に、優子は心から心配をしてくれている様であった。
僕はこの恥ずかしい状況を打開する為に苦しいのも堪え、何事も無かったかの様に優子と一緒にステージを下りた。
その後の体の様子は何事もない様であったが、何よりも情けない・・。
暫く優子とは黙って手を繋い歩いていると、優子の方から口を開いた。
「俊夫ぉ〜、あんまり無理しちゃ駄目だぞ!」
優子は僕の体の事を心配してか、目には涙を溜めていた。
「すまん・・。」
(何処かで名誉挽回しなくては・・)と必死に思う俊夫であった。
続く・・・


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