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作品名:鉄の妻 作者:池野 蛙

第10回   第十話
【10】
僕達は車の中へと戻り、優子の濡れてしまった服を僕は早速脱がしてあげた。
優子の体は何処の外傷も無く、綺麗な体をしている。
僕は優子の体を乾かす為に車のエンジンを掛けヒーターを入れた。
その後優子の海水で濡れてしまった体をバスタオルで全身を拭いてあげ、ワセリンを塗って全身をオイルコーティングした。
「優子、本当に体は大丈夫なのかい?」
僕は優子の事が心配になり、念を押して聞いてみた。
「スコシ ネムイケド・・・ ダイジョウブヨ♪」
優子は何事も無いかの様に明るく振舞った。
僕は来る時に着ていた衣類をバックから取り出し優子に着せてあげた。
「優子、君の体の事が心配だから、そろそろ家へ帰ろうか?」
平然を装っている優子だが、やはりどうしても気になる、僕はやはり帰る事にした。
しかし、優子からは思わぬ意外な答えが返って来た。
「ネエ トシオ カエルマエニ オネガイガ アルノ・・・
モウスコシ コノケシキヲ ミテテモイイ?」
優子は僕の顔を覗き見て、頼みこむ様に言ってきた。
こうも可愛く頼まれてしまっては、優柔不断の僕としては流石に断りきれない。
僕は優子の「大丈夫」と言う言葉を信じて、優子のお願いを聞いてあげる事にした。
優子の願いを聞き入れる為に僕は海の良く見える所まで車を移動し、そして車越しに優子と2人海を眺めた。
そろそろ日が沈む・・・夕暮れ時の海もとても綺麗だ。
僕は優子の肩にそっと手を掛けた、そして優子も僕の側に身を預けた。
暫く優子と僕は身を寄せ合っていた、そしてその後優子の方から口を開いた。
「ネエトシオ・・・イマナラ エッチノイミ ワカルキガスル・・・」
優子のその思いも因らない言葉に僕は驚きが隠せない、人間と何処が違うのかさえ疑問に思えてくる。
僕は返す言葉も見つからず一言「うん」と頷き、そして優子の肩を強く抱き締めた。
「コノキモチ フシギ ・・・・ コワカッタノニ・・・
トシオガソバニ イルト・・・フシギ・・・・・・」
そう言うと優子は僕の顔に近づき目を閉じた。
僕は優子のその純粋な気持ちに引かれる様に、そっと優子の唇にキスをした。
今日のキスは不思議と軟らかかった・・・。
それからどの位時間が経過したのだろう、日も沈み辺りはすっかり暗くなっていた。
灯台には明かりが灯り、夜の海を照らしている、海の香りは夜風と一緒に流れて来る。
「ネエトシオ アリガトウ・・・ ワタシ トシオノコト スキヨ・・・」
優子は僕の方を見つめ応えた。
「僕もだよ優子、愛しているよ」
僕達はここでお互いの愛を深め、そしてこの幸せな時が永遠に続く事を祈った。
「さあ優子、そろそろお家へ帰るよ。」
僕は優子の了解の意思を確認し、自宅へ向けて車を走らせる事にした。
車を走らせて少し経つと優子は眠気を訴えた、僕は車の座席を倒し優子を寝かせるとまた自宅に向けて車を走らせた。
優子が眠気を訴える事など今までに例が無い、僕は嫌な胸騒ぎがして車のスピードを上げた。
それからと言うもの優子は大人しく座席で横になっている。
海から車を走らせ2時間半程で家に到着した、そして僕は優子に声を掛けた。
「優子、家に着いたよ」
「・・・・・・・・・・」
しかし、優子の返事は無い。
「優子!?・・・・・・。」
僕らが家に着いた時、車の中で優子は動かなくなっていた。
続く・・・


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