『トンネルのお宝』
出口の見えないトンネルを
ずっと歩き続けていたとき
トンネルを抜けた先に、
そこへ入る前のような
元通りの風景を期待していた
長い長い年月の末に
ようやくトンネルを抜けると
目に映るのは紅葉に落葉
入る前は桜が満開だったのに……
とっくに夏は終わっていた
得るべきものを得られなかった
一方で、暗闇を歩いていたからこそ
得られたお宝も少なからずあった
なかでも一番大きいお宝は
長いトンネルを抜けたという経験
いつかまた目の前にトンネルが現れても
今度はもっと手際良く脱出できるはず
迷っている誰かをおそらく助けられる
後悔という名のお宝が
僕の進路を照らしている
2014年4月27日作 2014年5月11日ラジオNIKKEI『私の書いたポエム』放送分
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