20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ねぶの詩集4 作者:ねぶ

第4回   『賭博者的活動写真』
『賭博者的活動写真』2012-04-03


孤独で胸が張り裂けそうな夜ばかりだった

誰もいない暗い部屋に溶け込むのが心地よかった

電車の前に身投げしたくなる衝動を抑えるのに必死だった

通りすがるすべての人々に笑われているような気がした

聞こえないはずの声が聞こえ、聞きたい声は聞こえない

1/1だったはずの俺はいつの間にか1/1200万になった

悲しくて、情けなくて、心細くて、どうしようもなく無価値に思えた

やりたいことがあったのに、それが何かも思い出せなくなった

ただただ、今日という日を乗り切ることだけで精一杯

ゴミ箱の中で、もがいてあがくガラクタみたいな日々だった



そんな日々も今は昔



胸を突き抜ける孤独感はもろかった俺の心を鍛錬していた

暗闇に身を浸していたから、薄日でさえ有難いと思い知った

身投げしたい気持ちを抑えていたのが何なのかを思い出した

たとえ俺を嘲笑うヤツがいたとしても、もはやどうでもよくなった

聞き取れないような誰かの叫びもなんとなく感じられる気がした

1/1でも1/1200万でもなく、今も昔も半人前だと気づいた

いつの間にかモノサシをいくつも見つけることができた

目指した場所と違っても、これもアリかと思えるようになった

ガラクタだと思っていたものが今の俺の背中を支えている



大事なものは失ってから気づくことが多い

無駄だと思ったことが無駄ではなかったと後から気づく

瞬間、瞬間を写真のように切り取っても判断できない

頬がこけるほど泣いた子の次の写真が満面の笑みで

勝ち誇ったヤツの次の写真が遺影になるかもしれない

俺たちは写真ではなく動画の中で生きているのだから



振り返ることはできるけれども、一寸先も見えない

それは暗闇ってことでも、眩いってことでもなく

明暗も苦楽も生死も何もかもがわからないってこと

石橋を叩いて渡る者さえギャンブラー

明日負けてもいいし、明後日負けても凹むなよ

死ぬ瞬間に笑顔であれたら、すべては報われる



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 36119