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作品名:ねぶの詩集4 作者:ねぶ

第163回   『未来』
『未来』

春の駅は旅立つ若者であふれていて

一人の例外もなく切符を握っている

しかも全員が同じ方面へ向かうらしい

だから、ラッシュ時のような大混雑で

なかには乗りそびれる人も出てくる



でも、もしも乗れなかったとしても

次の列車はちゃんとやってくるよ

その駅は途中駅、次の駅も途中駅

終着点はもっとずっとはるか先

先に発ったのは各駅停車で

次に発つのが快速や特急かもしれない

そもそも誰かと競っているわけでもない



一本や二本、乗り遅れたとしても

自分の目的地に着ければそれでいいよ

次の列車が来るまでは考える時間

失敗からしか学べないこともある

今は失敗に思えたことだって

いつか活かせたと思える日が来れば

それは失敗ではなく糧だろう



列車に定員があっても

行き先に定員はない

発車時間は決まっていても

到着時刻は決まっていない



切符の行き先の名は「未来」


2017年3月10日作
2017年3月19日ラジオNIKKEI『私の書いたポエム』放送分


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