『未来』
春の駅は旅立つ若者であふれていて
一人の例外もなく切符を握っている
しかも全員が同じ方面へ向かうらしい
だから、ラッシュ時のような大混雑で
なかには乗りそびれる人も出てくる
でも、もしも乗れなかったとしても
次の列車はちゃんとやってくるよ
その駅は途中駅、次の駅も途中駅
終着点はもっとずっとはるか先
先に発ったのは各駅停車で
次に発つのが快速や特急かもしれない
そもそも誰かと競っているわけでもない
一本や二本、乗り遅れたとしても
自分の目的地に着ければそれでいいよ
次の列車が来るまでは考える時間
失敗からしか学べないこともある
今は失敗に思えたことだって
いつか活かせたと思える日が来れば
それは失敗ではなく糧だろう
列車に定員があっても
行き先に定員はない
発車時間は決まっていても
到着時刻は決まっていない
切符の行き先の名は「未来」
2017年3月10日作 2017年3月19日ラジオNIKKEI『私の書いたポエム』放送分
|
|