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作品名:ねぶの詩集4 作者:ねぶ

第139回   『九時半の男』
『九時半の男』

学生時代、バイトを終えて

行きつけのトンカツ屋で

ちょっと遅い夕食をとる

僕は身長184cmの大男だけれど

頼むのはいつもレディースセット

それが一番安いメニューだから

ご飯もキャベツもお代わりだ

お代わりしてもタダだったから



わけあって、一年半も間を空けて

そのトンカツ屋をたずねてみたら

「久しぶりだなぁ、九時半の男」

なんて威勢のいいオヤジさんの声

どうも毎回、野球中継の終わる頃に

僕はお店に来ていたらしかった

しかし、一年半も間が空いたのに

覚えていてくれていたのが嬉しかった



それからさらに十年あまり経ち

僕が住んでいるのは横浜ではなく青森

通うのはトンカツ屋ではなく中華料理店

頼むのはレディースセットでもなく

辛めにしてもらった麻婆飯の大盛

変わらないのは閉店間際の入店時間

昔も今も変わらず僕は「九時半の男」



2016年7月21日作
2016年8月3日加筆修正
2016年8月14日ラジオNIKKEI『私の書いたのポエム』放送分


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